「本の紹介」についての舞台裏
執筆者 金子幹夫
1.「授業に役立つ本」の舞台裏です
新年、いかがお過ごしでしょうか。
「授業のヒント」は、ここ数ヶ月の間、経済教育をどのように捉えることができるのかを考え続けています。今月は、このテーマについて別の角度から迫ってみたいと思います。テーマは、「授業に役立つ本」です。
本メールマガジンで毎月お届けしている「授業に役立つ本」のコーナーは、どのように製作しているのかという舞台裏の一部を紹介します。その中で、経済教育をどのように捉えるのかということについて一緒に考えてみたいと思います。
2.「授業に役立つ本」はどのようにして選ぶのか?
毎月連載している「授業に役立つ本」は、次の3点を意識して選んでいます。
第1点目は,新しく出版されたものから選ぶということです。新刊本は,全国どこでも入手しやすい本ですし,共通の話題にもなりやすいというのが理由です。
第2点目は,経済教育ネットワークの記事ですから,「経済」に関する本から「教育」に関する本まで幅広く取り上げることを意識しています。
第3点目は、明日の授業づくりに役立つ本も選びますが、同時に経済教育とは何だろうか? という原点を考えるための本も選んでみたいと意識しています。
3.箱を4個つくります
もう少し詳しく説明します。
先ほど第2点目に「経済」の本もあれば「教育」の本もあると書きました。
同様に第3点目に「明日の授業づくりに役立つ」本もあれば「経済教育の原点を考える」本も選びたいと書きました。
ここから、次の4つの箱を設定することが出来ます。① 明日の授業づくりに役立つ経済の本、②明日の授業づくりに役立つ教育の本、③経済についてじっくり考えながら読む本、④教育のことについてじっくり考えながら読む本の4つの箱です。
4.具体的にこんな本を選びました
例えば①ですと 「マイケル・キーン&ジョエル・スレムロッド著 中島由華訳『課税と脱税の経済史』みすず書房 2025年」があげられます(メルマガ2025年6月1日 No.197号)。
同様に②ですと「シャリー・ティシュマン著 北垣憲仁 新藤浩伸訳『スロー・ルッキング よく見るためのレッスン』東京大学出版会 2025年」があてはまります。(メルマガ2025年9月1日 No.200号)。
③の対象になるのは「浅子和美 飯塚信夫 篠原総一 編『新 入門・日本経済』有斐閣 2024年」です(メルマガ2025年1月5日 No.192号)。
④はどうでしょう。「竹田青嗣・苫野一徳『伝授!哲学の極意』河出書房 2025」 (メルマガ2025年6月1日 No.197号)が対象になりそうです。
5.本の中で注目するのは?
「今月はこれ!」と本を選んだとします。まずは通読です。線を引いたり、余白に書き込んだりしながら読みます。二度目は各ページの余白に要旨を一行で書き込んでいきます。
三度目はノートに書き込みながら読み進めていきます。
これで本の構成が見え隠れしてきます。でもまだ読み込みが足りない場合があります。時間との勝負です。
注目するのは、本の第一文です。「なぜ、著者はこの文を冒頭にもってきたのか?」。その理由を本文から探し出すわけです。次に注目するのは章立てです。なぜ、著者は次の章に、このテーマを持ってきたのか?という理由を本文から探します。
この作業がうまくいくと、どのようにして紹介すればよいのかという道筋らしきものが浮かんできます。
6.時々差し替えがあります
作業を進めていて、選んだ本が期待通りでしたら、どんどん仕事が進んでいきます。しかし、毎月の中旬にさしかかった頃、「これは経済教育に関心を持っている先生の役に立つ本かな?」と感じ始めてしまうとたいへんなことになります。
翌々月に紹介するために購入していた別の本に変更するかどうかの判断をしなければいけません。差し替えになった場合、月末はたいへんなことになります。「えいっ」と覚悟を決めての判断となります。
7.いろいろな本の読み方
紹介者は、これまでいろいろな方に「本をどうやって読んでいますか?」、「難しくて解釈がたいへんだ!というページに出会ったら、どのように読みますか?」という質問をし続けてきました。
いただいた回答はいろいろとありましたが、はじめの質問については「きれいに読む」方と「書き込んで読む」方がいて、やや後者の先生が多いかなと受け止めています。
2番目の質問については「何度も読む」、「ノートで分析しながら読む」、「声に出して読む」といった回答をいただきました。
紹介者は、解釈が難しいページに出会ったら、朝一番で再読するようにしています。不思議と、昨晩はわからなかった内容が朝になると解釈できているのかなと感じることが多いのです。皆様はどのように読んでいますか?
8.市場調査
紹介者は「先生のための経済教室」をはじめ、様々な研究会で、先生方がどのような本を読んでいるのかをうかがうようにしています。そこで感じるのは二極化です。
忙しくてなかなか読む時間が取れないとお話ししてくれる先生がいます。一方で、積極的に文献講読を続けている先生もいます。スパッと二極化しているなと感じます。本コーナーがすべての先生方を対象に、少しでも役に立てばと思います。
9.新年ということで
「毎月どのような本が紹介されるのかを楽しみにしています」というお話しを時々うかがいます。だからというわけではありませんが、毎月どの書籍を紹介するのかについて、事前に公開していません。
紹介者は、この原稿が皆様の手元に届く頃、翌月号の作業に取りかかっています。そこで新年ということで「この本はどうかな?」と現在検討している本を紹介します。
それは、内田由紀子先生の『日本人の幸せ―ウェルビーイングの国際比較』(中公新書)です。お読みになりましたか? 今月はここまでです。
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