■(中学校)   デジタルの中の新聞活用法
 執筆者 兼間 昌智(札幌大学非常勤講師)

*アナログにこだわる
 学校では、「1人1台タブレット」が当たり前になった今日この頃です。ニュースや情報がデジタルで入手できる今だからこそ、アナログの代名詞「新聞紙」にこだわってみたいと思います。
 新聞の授業活用方法は、大きく2つに分かれます。
 1つめは、授業で活用する方法です。この方法で使用されるのは、主に「新聞記事」でしょう。授業に関する「新聞記事」を提示し考えさせる方法、考えをさらに深めるために「新聞記事」を使用する方法などがあります。これは、デジタルの新聞記事を活用するのと、大きな違いはないかと思います。それでも、見出しの見せ方で、アナログの方がインパクトがあるという程度の違いはあるかと思います。
 2つめは、コンクールを活用する方法です。おすすめは、日本新聞協会が主催する「いっしょに読もう、新聞コンクール」です。https://nie.jp/month/
 今年で、第14回を迎える取り組みです。12月ごろに募集を開始し、翌年9月までに応募します。これには賞があり、各地方新聞協会の各賞と、全国の各賞があります。
 そのスタイルは以下のようになっています。
 ①新聞を読み、自分の気になる記事を1つ選びます。
 ②その記事に関して、自分の考えを書きます。
 ③その記事と自分の考えを、他の人にプレゼンテーションします。
 ④その意見に対して話し合いをします。
 ⑤最終意見を書きます。

*新聞を読んで思考力・判断力・表現力を鍛える
 私は、現役の教師だったころ、社会科の授業の一環として活用しました。
例えば、「地球環境問題」に関するグループワークをしたときに、このコンクールに応募することを生徒に伝え、学年単位で応募しました。国語の教師とコラボしたときは、テーマ設定をしませんでした。
生徒には、新聞を1冊与えます。その中から、気になる記事を選びます。気に入ったのがなければ、別の新聞1冊を与えます。記事が見つかるまで、何冊も選んだ生徒がいました。ですから、初回の授業では、生徒数の3倍くらいは用意する必要があります。だいたい1時間程度で、ほぼ全員記事を選んでいました。
 この時間で、生徒は相当新聞を読むことになります。これが、アナログの新聞の利点です。デジタルだと、検索をかけて調べることになりますが、アナログはとにかく全体を読まなければならないからです。この時、生徒は読解力を相当駆使しているでしょう。
 そして、自分の意見を書きます。この時、「引用」を指導します。150字から200字という指定があるので、「引用」は3分の1程度にするように指導しました。
 授業では、グループ内での意見交流の場合と、教室内の生徒の交流が考えられます。どの方法をとっても良いと思います。教師に聞いても良い、という場の設定も良いと思います。
 ここで、「思考力」を使って、意見交換ができます。
 そして、話し合った後の自分の意見を、最後に書きます。最初の考えと同じ生徒もいれば、違う生徒もいます。そこが最大のポイントです。
 このように、デジタル時代だからこそ、アナログの新聞を使って、「思考力、判断力、表現力」を鍛える活動をしてみませんか。

■(高等学校)  写真やグラフの発信しているメッセージが聞こえますか?
執筆者 金子幹夫(神奈川県立三浦初声高等学校総括教諭)

*新聞離れ
 筆者が勤務しているフィールドで「上から読んでも,下から読んでも同じものは何でしょう?」と問うと,数年前までは「しんぶんし!」という声が圧倒的でした。ところが,ここ数年は「トマト!」と叫ぶ生徒が急増しています。簡単な生徒分析ですが,高校生の新聞離れを感じ取ることができます。
 そこで本稿では新聞離れが進みつつある教室において,どのような授業実践が可能かを考えることにします。今回注目するのは,グラフや写真といった資料です。

*写真やグラフに注目!
 まず教師が授業で活用したい記事を見つけたら、
「写真を見てみよう」、
「グラフや表を見てみよう」、という発問からはじめます。
例えば「消費者物価が上昇した」という記事を取り上げるとします。その記事に1970年代から現在までの「消費者物価指数の推移」示したグラフと「スーパーで売っている卵」の写真が掲載されていたとしましょう。
まず、写真です。
教師は生徒に「どうしてこの記者は卵の写真を載せたかったのでしょうか?」と問います。掲載する写真はカップラーメンでもポテトチップスでもなく,どうして卵なのかを考えるのです。
生徒は生活経験から得た知識を用いて発言します。「もともと安い商品であった」であるとか「鳥インフルエンザの影響?」といった知識が出されます。
その上で「この記者が卵の写真を掲載したいと考えた理由を記事の中から探しましょう。記事の何行目に○○と書いてあるからです・・・というように答えてください」と指示します。
 次は、グラフです。
なぜ記者は「消費者物価指数の推移」を掲載する必要があったのかを考えます。その後,「記事の中からその理由を見つけてみよう」と生徒に指示します。そして,最後に「もう一枚写真を掲載するスペースがあったとしたら記者であるあなたはどんな写真を載せるかな?」と問いかけます。
多くの生徒は,価格の変化というテーマで写真選びをはじめます。
 
*そのキモは?
どうしてこのような授業を考えたのか。理由は次の2点です。
第一は,新聞に書かれている文字記号を読み解くところから授業をはじめると教師と生徒の認識にずれが生じるからです。
第二は,写真→グラフ→テキストデータという順番で授業内容を構成することで自然に新聞を読んでもらいたいと考えたからです。
生徒が見てくれそうな写真やグラフ探しは,教師にとっても楽しい仕事になると思います。

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