今月の授業のヒントは、本年1月に実施された共通テストの「現代社会」と「政治・経済」の問題をもとに、それを日頃の授業にどう生かすか、二人の先生に寄稿していただきました。
 共通テストの問題は大学入試センターではまだ本年度分がアップされていないので、新聞社や予備校のHPからダウンロードしてください。(こちらは読売新聞のHPが参照できます。)
 

■さらに読み解く力をつける授業実践を!
千葉県立津田沼高等学校 杉田孝之
(1) 読み解く力を保障する授業を
 今回の共通テスト「現代社会」を解いたのだが、リード文や問題の設定、統計の読み取りで、正確に読みこなす能力が必要であり、筆者は試験時間を恥ずかしながら数分オーバーした。
設問で「すべて選んだとき、その組み合わせ…」も問われたので、問われている制度や基本的な知識などを活用して選択する必要があった。

限られた時間で正確に読み解く力を育てる実践について、公民科だけで日々おこなうだけでよいのかという疑問を持っている。
共通テスト翌日の自己採点提出日に、私が担任する理系生徒との何気ない会話で、先生の授業では初見の資料や統計などを読み解き、生徒間で読み取った内容を共有する時間が保障されているので続けてほしい。さらに国語や他教科でも限られた時間で問題や統計、分野横断的な長文を読み解く学習場面を設けてほしいとの声があった。

(2) 共通テストのメッセージから得られた授業構想
 公民科の授業は共通テストで高得点を獲得するための実践ばかりでなく、地歴科とも連携し主権者を育成する目的もある。
この点をふまえると、生徒が教科書や統計などを読み解き、考えるに値する学習内容で実践したい。できれば学習内容は具体的で、かつ発展性や他の単元とも関連性がある教材で、公民科らしい学習内容で実践したい。
例えば、今回の共通テストから得られた授業構想として、「現代社会」の第5問、問3や問5をベースに、少子高齢社会を前提にした、財政や世代間交流などを通じた地方自治体の持続可能性、NPOとの協働のあり方などを、教科書と初見の資料を組み合わせ、各単元のまとめなどで取り組んでみたい。

(3) 共通テストのメッセージから多様な生徒を前に、どう実践するか
 共通テストは大学入学のためのハードルである。高得点を取らなければ、難関大学突破は困難だ。
一方で大学入試とは無縁な高校生(「公共」は必履修)も存在する。
今を生きる高校生が将来幸せになるためにも、テスト対策とともに、時間はかかっても、正しく読み取り習得した学習内容をもとに、実生活で活用できるようになったほうが良いと筆者は考えている。
とはいえ、共通テスト2回のメッセージは今後も続くであろうから、まずは生徒が共通テスト本番でうまく向き合うためにも、生徒は筆者が提示した学習内容から「なぜ」と問い続け、考えることができるような実践を続けたいと考えている。

■「攻めた」問題をもとに「攻めた」授業を
大阪府立三国丘高等学校 大塚雅之
(1)「攻めた」問題
今回の共通テストは前回以上に色々な意味で「攻めた」ものであったと思います。
変に気になってしまったのが、「政治・経済」の第2問リード文で「白板に書いた」という設定。「黒板」でも「ホワイトボード」でもない。何か教育政策的に意味があるのか?深読みしてしまいました。
ここでは、さらに深読みして、今後授業をどのように行うかを問題から考えてみたいと思います。

(2)新たな知識の必要性
まずは知識面ですが、「マネタリーベース」など定義をしっかりと押さえておかないと解けない問題が出題されました。(「政治・経済」第2問の問4)
また、同じ第2問には、昨年度に引き続き、銀行のバランスシートが出題されています。
センター試験の時より細かい知識を問う。これは、これまで教えられていない新しい知識もきちんと正確に教えろということかと捉えました。
もっと深読みすると、現場の授業は少しずつ知識を上書きして、バージョンアップしながら変えろ、ということかとも思いました。

(3) 良問を授業に生かす
他方、知識以外の問題については、読み取らせたり、考えさせたりする良問も多かったのではないかと思います。
注目問題として「政治・経済」の第2問の問2を取り上げたいと思います。
「環境問題と関連させて生徒が書いた経済主体の関係図を会話文から読み取って選べ」という問題です。問題自体は単なる読み取りです。ただし、生徒がやっていること自体は、知識の活用ではないかと思います。

この問題をヒントに授業を行うとすれば、
①知識を正確に教えていく。
②授業の途中で関係図(絵)を個人で書かせる。グループで説明しあう。
③教師側から条件設定を変えて、関係図がどのように変化するか、前後の違いを議論させて、発表させる。
と言うようなプロセスが考えられます。
例えば、「地方自治に関する関係図を書きなさい。ただし、地方交付税交付金、国庫支出金、住民税、所得税、ふるさと納税という語句は使うこと」といった課題を与える。
その後、「地方交付税を減らした場合どうなる?」、「特定の自治体だけふるさと納税制度から排除したらどうなる?」と条件変更を行い、新たな図を書かせて政策の意味に気付かせるといった感じです。
これなら授業のマイナーチェンジで済みながら、主体的に生徒が取組む要素を組み入れることができ、現場でやれそうかと思い提案させてもらいました。

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