千葉県立松戸向陽高等学校 大倉 泰裕

 4月以来継続している評価に関する提言、ここまでの議論を総括する意味もこめて、今号では、大倉泰裕先生から、ご自身の実践を踏まえた提言をいただきました。 (経済教育ネットワーク   新井 明)

1 観点別評価が“本気”で始まる
 いよいよ来年4月からの新課程実施に伴い、高校でも観点別評価が“本気”で始まります。
「観点別評価ってどうするんだ」、「思考力・判断力・表現力の評価ってどうやって付けるんだ」などいろいろな声を聞きますが、その前に、なぜこのような評価が必要なのかということを理解しておく必要があります。
そうでないと「面倒くさいよね、今まで通りでいいじゃないか」とか、他人の実践事例を形だけ真似るだけで終わってしまうからです。
だからといって、評価の話を初めからしていくと連載ものになってしまいます。そこで私の実践をふまえてお話しします。

2 評価の前に授業がある
 「授業と評価は一体である」とよく言われますが、教育という場面での評価であると考えるのであれば、指導の結果として生徒がどのように変容したのかを見ることが評価であると思っています。
ということはまず授業が大切です。
社会科・公民科の授業はどうしても知識が多くなります。これは教科の特性として当然のことです。また知識が無いところに思考も関心も生まれません。
でも知識を大量に与えることだけで終わってはいけません。ここを変えることが最初に必要なことです。

私は授業をするとき、「この授業で大切なこと(概念、原理、法則など)は何か」ということから授業を組み立てるようにしています。
どの知識も大切ですし、教えたいと思うのは教員として当然です。でもそれをしたら、生徒は拒絶反応を起こすか、ひたすら暗記にはしるかです。
知識を概念などと結びつけて教えることで、なぜそのような制度があるのか、なぜ大切なのかを繰り返し教えて、思考につながるように心がけています。

3 考査での評価から
 その上で評価ということになります。特に高校では2単位×8クラスなどという授業の持ち方も多いと思います。
そうなるとどうしても考査での評価になるでしょう。
考査だけで評価すべきではありませんが、1クラス40人×8クラス=320人のレポートを見ろといわれたら、それだけで観点別評価から逃げ出したくなります。
そこでまず考査でしっかりと思考などを評価することを考えます。

私は通常の考査でも作問するときには観点を意識しています。
「現代社会」で4割程度、「政治・経済」でも3割は思考・判断・表現の観点で作成しています。
例えば、あるできごとやグラフを概念や原理などを用いて解釈させるなどという問題をよく出題します。
また「公共」を意識して、功利主義の立場に立てばどのような選択をすることになるのか、などという問題も作成しています。
これらの問題は記号で選ばせることもありますが、解釈や理由を記述させるという方が、生徒がしっかりと思考できたのかを見るのに適しているでしょう。

4 大切な採点基準の作成
 さてその記述させるということですが、ここでまた大切なことが出てきます。記述式問題の採点基準です。
その採点基準とは何でしょうか。分量でしょうか。
確かに短すぎるのは採点できないことがほとんどです。ですから生徒には解答の仕方を事前に、あるいは問題文中に指示することが必要です。
これは表現の評価になりますが、学力が十分身に付いていない生徒の多くは国語の力に課題があると思っています。
本来はここをしっかりと指導することが必要で、現行学習指導要領でも「言語活動の充実」はその1丁目1番地といわれてきました。
ただしそこから始めると、「現代社会」や「政治・経済」の評価までたどり着きませんから、日々の授業では指導するにしても考査の時には見本や解答の仕方を示しておくことも必要です。

 さて、生徒が、こちらが望むような文章などで解答してきました。それをどう評価すべきでしょうか。
それには目標に準拠した評価という考え方が大切です。つまり評価規準です。
簡単に言えば、こちらがこのぐらいまでは出来て欲しいという解答を文字化して用意しておくことです。そこでは採点するときの視点やポイントを明確にしておきます。
たとえばキーワードを設定したり、複数の立場から意見を論じていたりすることを正答の条件とするなどということです。それをクリアすることによって思考や判断をしたと評価することになるからです。
ですから、採点者自身が規準を文字化して明確にしておくことはとても大切なことです。ここがぶれると記述式問題の評価は出来ません。これはレポートの評価などにもいえることです。
このとき、くどいようですが、あくまで思考としての出題でなければなりません。すでに授業で話をしていることを記述式問題で出題してもそれは知識・理解の評価でしかありません。

5 最後に提案
 今回は短い中での話なので、この程度となりますが、最後に一つ提案したいことがあります。
観点別評価を進めるのであれば、ぜひ授業と考査問題を他の先生に公開してください。
他の先生方に見ていただき助言を受けるということは、授業も考査問題もよりよいものが出来ることに直結します。自分では気が付かないことを指摘してもらい、それをその後の指導に生かすことが出来ます。
「三人寄れば文殊の知恵」という言葉があります。新しい評価方法を面倒と思わずに、大勢の力で生徒にとってプラスになるようにしていきたいものです。

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