①どんな本か?
・新教科「地理総合」を担当する先生向けの、地理に経済の視点を加えた経済地理の本です。
・特に、地理学を専攻していない読者、歴史や公民担当の先生が免許状をもっているでしょうということで「地理総合」を教えなければいけなくなった先生方を念頭において、地理の専門領域である地図や統計だけでなく歴史や経済という隣接分野も同時に学べる本となっています。

②どんな内容か?
・全体は大きく二部わかれていて、前半は「GISを知って活用しよう」と後半「日本の素顔を地図で読む」で構成されています。
・前半の「GISを知って活用しよう」では、
1 「GPSとGISの違い」で、GPS(全地球測位システム)とGIS(地理情報システム)の違いが紹介されています。
2 「身近なGISの活用事例」で、地理院地図、RESAS,今昔マップon the webの三つのGISの活用事例が紹介されています。
3 「GIS地図で何ができるか、どんなことが読み取れるか」で、二つの事例が紹介されています。
4 「GIS地図はどのようにつくるのか」で、無料のソフトウエアMANDARAを使っての様々な活用例が紹介されています。
・後半の「日本の素顔を地図で読む」では、
全国を8つの地方(九州・沖縄、中国・四国、近畿、中部、関東、東北、北海道)にわけ、それぞれの地域の特色が最初の4ページで紹介され、それをふまえて特徴的なトピックが地方ごとにとりあげられるという構成になっています。

③どこが役に立つか?
・「地理総合」を担当しなければならなくなった高校の先生向けには、前半のGISの箇所が直ぐに役立つでしょう。
・実際にこの本の記述にそって、自分で地図やグラフを表示してみて習熟したら、自分なりのテーマでさらに習熟してゆくことで、指導の手がかりがえられるはずです。
・なかでも、RESASとMANDARAは地理の学習だけでなく、公民でも十分に使えるソフトですので、本業の公民経済の授業での活用まで広げることができると思われます。
・中学校の先生方には、新学習指導要領の「C日本の様々な地域」の学習に際して、地理院地図の活用部分と、後半の各地方のトピックが直接授業で使える箇所になるでしょう。
・トピックの箇所では、歴史や公民との関わりにも注目した事例(例えば、隠れキリシタンの里、大阪の水運など)が選ばれています。また、効率と公正、社会資本などの概念が登場していますので、地理の学習のなかで公民へのつながりを意識させることができるようになっています。
・なお、地理学習では高校でも中学でも、日本地誌だけでなく、世界の地域の学習や国際理解に関係した世界地誌の学習がもとめられています。それに対しては、本書の源流となった「経済地理検討委員会」が作成して、日本経済教育センターからアップされている「グローバル社会を生き抜くために」と「マジで知りたい 日本あっちこっち」という二つの教材パンフが役立つでしょう。

④感想
・地理の専門教育をうけてこなかった評者にとっては、まず面白い本だったというのが最初の感想でした。特に、後半の各地の取り上げ方には思わず感心するものが多くありました。
・次に感じたのは、前半のGISの解説と活用方法の箇所が役立つという印象です。特にRESAS、MANDARAはこれを使って探究学習ができるぞという感想を持ちました。ちなみに、RESASには現在、コロナに関する情報を集めたV-RESASという欄があり、ホットな情報を直ぐに使えます。
・最近は地図帳が使えない先生が増えているということを、ベテランの中学の先生から聞きました。このような読み物としても面白い本からヒントを得ながら、地図にも教材の選択にも習熟してゆくのためのおすすめの本ではと思いました。

(経済教育ネットワーク  新井 明)

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