執筆者 茨城県立並木中等教育学校講師・法政大学兼任講師 藤牧 朗

 前々号、前号と、お二人の先生方の論考を読ませていただきました。そこで、自分が常に考えている「これからを生きる生徒のための授業」のことを思いました。そして、その教育を進めていこうと同じように考えていらっしゃる先生方と「授業と評価の一体化」について無理なく自然体でいっしょに進めていきたいと強く感じたところです。

(1)評価すること
私は、率直に言って、「評価をする」ということがとても苦痛でなりません。こういうと、「評価を苦痛と感じるなんて、教師失格だ!」と言われてしまうかもしれません。
しかし、そこには大きく分けて二つの意味が含まれています。一つは、同じ人間として自分が「他人を評価することが適切なのか」という、いわゆる一般的な意味です。
そして、もう一つは、それぞれの事項(教科科目ならその教科科目のそのとき指定の範囲)において、そこで用いるそれぞれの評価方法が適正なのかどうか悩んでしまう、ということです。
つまり、試験であるならば、もともとその試験における出題方法や解答方法などそれぞれが、その指定の範囲の評価をするのに公正で適正なものであるのかどうかです。また、ある事柄の「知識や解き方を訊く問題に正しく答えられるかどうか」ということを測定できたからといって、その項目を「理解しているかどうか」を評価できると本当に言えるかどうか、ということです。

(2)「授業-試験-評価」の一体的改革の試み
従来の知識事項の確認中心の学習及びそれに応じた試験では、学び方も受験勉強の方法も、そして評価の仕方も、多くの生徒も受験生も出題者もお互いに暗黙の了解があり、迷うことなく学習を進め試験を行いそして評価者も迷いなく「評価」を行ってきたことと思います。
 しかしながら、情報知識基盤社会と言われるようになり、学び方も社会構成主義の立場から語られるようになってきました。そして、新しい学習指導要領にはっきりとした表現で示されることにより、従来の知識を問うことに重きを置いた試験や授業のままで済ましていくことは難しくなってきました。
 そこで、当時担当していた中学社会科公民分野、高等学校「政治・経済」と「現代社会」において、授業の改善とそれに合わせた定期考査の出題方針の変更を同時に行いました。これは、私自身にとっての「授業―試験―評価」の一体的改革でした。

(3)全員参加型の授業へ
 理科を担当していたときは、実験という方法で「生徒がアクティブに参加する授業」ができていましたが、社会科、特に公民科では生徒受け身になってしまいがちです。そこで、自分自身が関わっていた獲得型教育研究会で身につけた理論と「演劇的手法」を積極的に取り入れ、全員参加型の授業設計を行いました。
その結果、授業における生徒の様子は大きく変わりました。そうなると、その授業とその授業で身につけることの評価規準もおのずから変わってゆきます。定期試験の形式も、短答式の事項を答えるものや選択式の問題はなくして、すべて文章や図などで説明する形式のものとしました。
このような形式変更を行うことにより、私が担当する授業でどのような学びを行い、どのような力をつけて欲しいのかを示していきました。しかし、この段階では、その意味を読みきれない生徒が多く存在したことは否定できないことにも気づきました。また、試験終了後試験返却時に、自分の答案の得点に納得がいかず「質問」に来る生徒が少なからずいました。
「どうにかしなければならない…」

(4)ルーブリックが使える
 そのような中、たまたま森朋子先生(当時島根大学、現桐蔭学園)の授業を受ける機会を得ました。そこで初めて、「授業から評価まで」一通りつながった流れを作成し、説明する機会を与えられました。そのときに、ルーブリックを用いることによって、学びの意義や学びの方法を明確に意識できるようになるものと感じたのです。
 ルーブリックは「その評価規準を明確に示すことができる」ことが最大の魅力です。それを学ぶ人が、「どのように学べばいいのか」すなわち「そこでの学びの道」「そこでの学び方」を示すことになります。私たち教師が、学ぶ人に対して学び方を明示できる強力な手段であるということになります。
「ここがポイントだ」「これを覚えればいい」という暗記中心で終わることができないからこそ、ルーブリックは学びの方向性を示すものとして、非常に重要な役割を担うものと感じています。
 とはいえ、作成に時間がかかりとても導入できないと感じる方も多いのではないかと思います。ここでは、私個人の作成時の意識とポイントを伝えさせていただこうと思います。

(5)ルーブリックへの心配とその克服
 作成のポイントを示す前に、よく言われる一つの危惧について言及しておきます。
「ルーブリックにあること以上のことの評価ができない」「ルーブリックにあること以上のことをしなくなるのではないか」この二つの話をよく聞きます。
 そこまでご理解いただいているのであれば、その方には、もうそれで充分に対処の方法はみえていることと思われます。その上位のことをも配慮したルーブリックを作成すればいいのです。あるいは、示したルーブリックを超えたものにはさらに上位の評価を与える旨を明記すればいいのではないでしょうか。そこは臨機応変に対応すればいいと考えています。

(6)具体的なルーブリックのつくり方~小さく・細かく
 IB(インターナショナル・バカロレア)のルーブリックなどをみるとあまりにもきっちりできているので、それを真似しようとするとあまりにも重く感じつくれなくなってしまうかもしれません。
ご自分でつくるときはその目的をはっきりさせた上で、小さくつくることが肝要です。そして、一回目で完璧なものをつくろうと考えずに、少しずつ完成させていくつもりでいきましょう。そして、ルーブリックの目的によってルーブリックをつくり分けるようにしていきましょう。
私自身は、
①通常授業用(自己評価と授業評価)
②発表時用(自己評価、他者評価、教員などによる評価)
③定期考査用
④レポート用、など分けて作成しています。
特に、試験用ルーブリックは、問題とともに細かく分けて作成することをお奨めします。例えば、20問100点満点とすれば、1問5点となります。1問について一つまたは二つの評価規準を示し、段階をつくります。そして、基準表を作成します。
初めは3段階がいいでしょう。3段階であれば採点するときもほとんどぶれることはありません。

(7)ルーブリックの「本質」
 「できるだけ先に明示する」「利用の場によって分けて作成する」ということが大切なことと考えて作成しています。
 学ぶ側にとっては、ルーブリックを用いることにより、学びの方向性や学び方を示されることになります。すなわち、自分自身の「学び方」を身につける道筋を示されるものがルーブリックといえます。当に、これからの学びの方向性を示す形成的評価の中心としての役割をするものといえるでしょう。

 なお、今年も産業能率大学の「授業力向上セミナー」で、このテーマを取り上げる予定ですので、産業能率大学のホームページをご参照ください。

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