①どんな本か
・次期学習指導要領の「公共」などで導入が期待されている哲学対話のガイドブックです。
・学校だけでなく、いろいろな場所で哲学対話を実践していて疑問を感じている人、うまくゆかないで悩んでいる人、これから始めたい人向けのまさに「ゼロからはじめる」ための本です。

②どんな内容か
・次のような全5章の章立てになっています。
 序章  深い対話とは何か
 第2章 対話の目的と方法
 第3章 対話の実践方法
  対話の場所と環境/目的とファシリテーション/対話の進め方・終わり方
/対話の記録の仕方/題材と教材/道具/対話で困ったとき
 第4章 知っておきたい哲学のテーマの概説
  人生と生き方/政治と社会/倫理と道徳/宇宙と存在/知識と科学
 /神と宗教
 第5章 付録
 
③役立つところ
・ハウツーに関する部分では、第3章が役立ちます。ここは、哲学対話の方法というだけでなくもう少し広い文脈で話し合いの方法、その時の運営の仕方が集められています。
・それぞれの項目の著者は、哲学対話を経験してきた人たちですが、成功例だけでなく、うまくゆかなかったときの対処法なども取り上げられていて、参考になります。
・第4章のテーマ解説の部分も役立ちます。
・ここは、テーマに関して、このような切り口でアプローチしたり、問いかけたりすることで対話が進むのだろうというヒントが詰まっています。
・ネットワークの先生たちにとって、政治と社会の部分が内容的には直接役立つ部分でしょう。そのほかに、「公共」の授業の倫理分野、またHRや道徳の時間などでの話し合いや探究活動のテーマのヒントにもなります。
・経済の項目がないのは残念ですが、これは私たちが経済で哲学対話をするならどんな内容とアプローチが求められるかという宿題にすればよいかもしれません。
・ネットワークでも哲学対話はいかがでしょうか。

④感想
・紹介者も高校生向けに、選択授業での哲学対話をこの本の分担執筆をしている上智大学の関係者の方々の協力で実施してきました。また、中学生向けにはクラス単位での哲学対話の実施をお手伝いしたことがあります。そんなこともあり、著者のリストをみて懐かしく思いました。
・普段の授業でも生徒と対話をするのは難しいし、生徒のグループでの話し合いを実質的に意味のあるものにするのは大変です。
・タイトルに哲学が入っているから、少々引いてしまうかも知れませんが、広く授業や話し合いの進め方のヒントが詰まっている本として手に取って見ると良いでしょう。
・付録では、オンラインによる哲学プラクティスが紹介されています。急遽増補したものでしょうが、タイムリーです。

(経済教育ネットワーク  新井 明)

Tags

Comments are closed

アーカイブ
カテゴリー