・著者岩村氏は日銀マン出身、現在早稲田大学教授

内容の概略
・サブタイトルが「グローバリズムの不都合な未来」となっていて、現在世界を覆っているグローバリズムがなぜ発生したのかを、主に金融面から歴史的にたどり、現状を分析、今後を展望しようとする本です。
・全体は6章に分かれていて、
 第1章 それらは19世紀に出そろった
 第2章 グローバリズムと分岐した世界
 第3章 競争の海に落ちる国家たち
 第4章 人々の心に入り込む企業たち
 第5章 漂流する通貨たち
 第6章 地獄への道は善意で敷き詰められている となっています。
・1,2章はグルーバリズムの歴史と現状をひろく概観、その上で、3章で国民国家、4章で株式会社、5章で現代の通貨を取り上げて、問題点を分析して、6章で展望と警告を出という構成です。
・サブタイトル、章のタイトルをみれば分かるように、現状批判、将来は危ない(中間層の崩壊、GAFA特にAとFによる人間精神や行動の支配)と主張している本です。

授業で使えるところ
・本書への批判の書き込みに「雑学の寄せ集めにすぎない」というものがありましたが、逆に、だから役立つ要素を持っている本です。
・現代をどのように捉えるか、ストーリーをもって時代や変化を捉え直す、きっかけになるはずです。政治でいえば、ホッブスもロックもルソーも登場します。経済では、スミス、リカードなどが登場。金解禁も高橋財政も登場します。金融が中心ですが、その枠をこえて著者の歴史観や時代観がわかります。当然、これは一つの考えですから、読み手は肯定的にも批判的にも突っ込みをいれながら読んで、歴史や公民の教科書ではなかなか得られない大きな物語としての歴史、時代をこんな風にまとめるやり方もあるのだという参考にすることができます。また、この本に登場する多くの思想家や出来事に関して、さらに専門書を読んでその知見を広めることもできます。
・話題のGAFA、ピケティ、仮想通貨、MMTなども扱われています。これで全貌がわかるわけではありませんが、ビビッドに現代のトピックスを生徒に紹介できるでしょう。
・コラムが46もあって豊富です。即使えるエピソードが発見できるかも知れません。

感想
・岩村氏は紹介者と同世代。時代感覚や現代の捉え方に似たところを多く発見できて個人的には共感しましたが、はたして若い先生たちはこれを読んでどう感じるか、議論してみたいところです。
・「ビッグブラザー」と聞いて、何を想像できるか、そのあたりがこの本への評価を分けるリトマス試験紙になるかも知れません。

(経済教育ネットワーク 新井明)

坂井豊貴『暗号通貨vs.国家』SB新書

 「多数決を疑う」の坂井先生の書いた暗号通貨の本。
 坂井先生は、ビットコインのマイニングに挑戦しているようです。
 新書版で気軽に内容が分かる本ですが、内容は結構深いところがあります。
 特に、暗号通貨の思想的なインパクトの大きさを指摘した箇所は検注目の価値ありというところです。
(経済教育ネットワーク 新井明)

新井紀子『AIに負けない子供を育てる』東洋経済新報社
 前著『AIvs 教科書が読めない子供たち』の続編。リーディングスキルテキストのサンプルが入っていて、自分のスタイルが分かる。(ちょっと恐いので私はまだ未挑戦)。こんな授業をすれば生徒の理解が深まるというサンプル授業を提示。
教員にとってハッとする指摘がたくさんでてくるが、一番は穴埋めプリントの意図せざる結果を指摘した箇所だろう。教員の善意とALを勧める施策、それと限られた時間の活用法として使われている穴埋めプリントの功罪、特にその罪を指摘した箇所は現場人間のとって痛い指摘だと思う。
 第9章での子どもの教育法では、エビデンスではない体験からの提案と断りつつ、教育実験が本来やってはいけない比較実験をやっているという批判的意識を踏まえた提言であり、ここも参考になる。
(経済教育ネットワーク 新井明)