①どんな本か?
・新教科「地理総合」を担当する先生向けの、地理に経済の視点を加えた経済地理の本です。
・特に、地理学を専攻していない読者、歴史や公民担当の先生が免許状をもっているでしょうということで「地理総合」を教えなければいけなくなった先生方を念頭において、地理の専門領域である地図や統計だけでなく歴史や経済という隣接分野も同時に学べる本となっています。

②どんな内容か?
・全体は大きく二部わかれていて、前半は「GISを知って活用しよう」と後半「日本の素顔を地図で読む」で構成されています。
・前半の「GISを知って活用しよう」では、
1 「GPSとGISの違い」で、GPS(全地球測位システム)とGIS(地理情報システム)の違いが紹介されています。
2 「身近なGISの活用事例」で、地理院地図、RESAS,今昔マップon the webの三つのGISの活用事例が紹介されています。
3 「GIS地図で何ができるか、どんなことが読み取れるか」で、二つの事例が紹介されています。
4 「GIS地図はどのようにつくるのか」で、無料のソフトウエアMANDARAを使っての様々な活用例が紹介されています。
・後半の「日本の素顔を地図で読む」では、
全国を8つの地方(九州・沖縄、中国・四国、近畿、中部、関東、東北、北海道)にわけ、それぞれの地域の特色が最初の4ページで紹介され、それをふまえて特徴的なトピックが地方ごとにとりあげられるという構成になっています。

③どこが役に立つか?
・「地理総合」を担当しなければならなくなった高校の先生向けには、前半のGISの箇所が直ぐに役立つでしょう。
・実際にこの本の記述にそって、自分で地図やグラフを表示してみて習熟したら、自分なりのテーマでさらに習熟してゆくことで、指導の手がかりがえられるはずです。
・なかでも、RESASとMANDARAは地理の学習だけでなく、公民でも十分に使えるソフトですので、本業の公民経済の授業での活用まで広げることができると思われます。
・中学校の先生方には、新学習指導要領の「C日本の様々な地域」の学習に際して、地理院地図の活用部分と、後半の各地方のトピックが直接授業で使える箇所になるでしょう。
・トピックの箇所では、歴史や公民との関わりにも注目した事例(例えば、隠れキリシタンの里、大阪の水運など)が選ばれています。また、効率と公正、社会資本などの概念が登場していますので、地理の学習のなかで公民へのつながりを意識させることができるようになっています。
・なお、地理学習では高校でも中学でも、日本地誌だけでなく、世界の地域の学習や国際理解に関係した世界地誌の学習がもとめられています。それに対しては、本書の源流となった「経済地理検討委員会」が作成して、日本経済教育センターからアップされている「グローバル社会を生き抜くために」と「マジで知りたい 日本あっちこっち」という二つの教材パンフが役立つでしょう。

④感想
・地理の専門教育をうけてこなかった評者にとっては、まず面白い本だったというのが最初の感想でした。特に、後半の各地の取り上げ方には思わず感心するものが多くありました。
・次に感じたのは、前半のGISの解説と活用方法の箇所が役立つという印象です。特にRESAS、MANDARAはこれを使って探究学習ができるぞという感想を持ちました。ちなみに、RESASには現在、コロナに関する情報を集めたV-RESASという欄があり、ホットな情報を直ぐに使えます。
・最近は地図帳が使えない先生が増えているということを、ベテランの中学の先生から聞きました。このような読み物としても面白い本からヒントを得ながら、地図にも教材の選択にも習熟してゆくのためのおすすめの本ではと思いました。

(経済教育ネットワーク  新井 明)

①どんな本か?
 ・経済学の研究と教育に半生をささげてきた著者がが、これまでに実感してきたことを若い世代に伝えたいという思いで書かれた本です。
 ・経済学の方法論から、経済問題の改善や解決を考えるために知っておかなければならないことを述べた、いわば碩学による広い意味での経済学方法論とでもいうべき本です。

②どんな内容か?
 ・全体は6章からなっています。まずタイトルを紹介しておきます。
 第1章 まずは控えめに方法論を
 第2章 社会研究における理論の功罪
 第3章 因果推論との向き合い方
 第4章 曖昧な心理は理論化できるか
 第5章 歴史は重要だ(History Matters)ということ
 第6章 社会研究とリベラル・デモクラシー
 ・第1章では、方法論が持つ矛盾、問いの大切さ、観察、文献の重要さ、論文を書くときの作法、書き方などが「控え目に」と言いながら、ストレートに扱われています。
 ・第2章では、グランドセオリーのプラスとマイナスということで、リカードの比較生産費説が取り上げられています。ドグマにならないための人間観や比較の重要性などが触れられています。また、行動経済学のプロスペクト理論も取り上げられています。
 ・第3章では、原因と結果の関係の理論である因果推論が取り上げられて、因果を逆転させるような「思い込みの罠」から脱出するには、明快なテキストを、ゆっくり考えながら(楽しみながら)読むよりほかはないと指摘しています。
 ・第4章では、心理の理論化が扱われています。行動経済学は直接ここでは言及されておらず、おもに「期待」に焦点が当てられていますが、当然、行動経済学の近年の普及が念頭にあったことは想定できます。
 ・第5章では、日本的経営の柱と言われてきた終身雇用の捉え方を紹介して、安易な一般化をするなと警告を発します。また、ジャヤレット・ダイヤモンドなどが提唱している経路依存性の問題も扱われています。
 ・第6章では、科学研究と政治の関係から、マーシャルのcool head, warm heartの解釈、完全競争市場の考え方、競争の捉え方などが扱われ、最後に、スコットランド啓蒙やハイエクの議論をもっと高く評価すべきと結論づけます。

③どんなところが役立つか
 ・授業に直接役立つ部分は少なくとも、私たちが授業を行うときに当たり前にすすめてしまっている比較生産費説の説明、完全競争市場の条件、日本的経営の説明など、本当にそれでよいかを振り返ることができます。
 ・比較生産費説、完全競争市場などの経済理論には、「強い仮定」があること、それを無視して説明したり、そのまま政策に反映させたりしようとすると疑問や無理が生じることが本書では指摘されています。その部分を読むだけでも十分価値ありです。
 ・研究に関しては、「自分が問うたこと、知りたいことを徹底的に調べ、証拠を挙げつつ筋道を立てて推論し、人を納得させる作業だ」と言います。これは、私たちが教育を行うときの心構えに通じるものでもあり、生徒が探究活動を本当に取組む時に伝えるべき姿勢ではないかと思います。
 ・他にも服膺すべき多くの指摘があります。その多くは、アリストテレス的「中庸」に満ちています。リベラル・デモクラシーの社会は、われわれの知識が不完全である限り、パッチワークでもよいから「どうにか切り抜ける」ことによるしかなく、「抜本的改革」のかけ声(政治や経済だけでなく教育でも同じ)には注意が必要だという指摘など、昧読したいところです。

④感想
 ・個人的に、著者の主張に共感を覚えて、著作を読んできた評者にとって、本書は新書であっても、その総括にふさわしい本ではないかと思いました。
 ・本書を手に取ったら、同じ中公新書の『戦後世界経済史』や『経済学に何ができるか』を手に取って見ることをすすめます。音楽に興味のある向きは、この夏に出た『社会思想としてのクラッシック音楽』(新潮選書)もどうぞ。
 ・アリストテレスは別として、ヒューム、ハイエクなどはなかなか高校までは取り上げられることがない思想家ですが、経済学も経済だけでなく、広く人文学(Humanities)を踏まえたリベラル・アーツであるべきという著者の言葉を噛みしめたいと思いました。

(経済教育ネットワーク  新井 明)

①どんな本か?
 ・高校の授業でも取り上げられ始めている「最後通牒ゲーム」を切り口にして、その「謎」(違和感)をさらに深掘りをして、進化心理学から行動ゲーム理論を解説しようとする入門書です。
 ・高校生も読める入門書となっていますが、誰でも読める専門書を同時にめざしてたため、著者もあとがきで言っているように、一般向けの部分と注釈一杯の専門書という二冊分の内容になってしまったという本です。でも、それだけ一粒で二度おいしい本です。

②どんな内容か?
 ・全体は6章からなっています。これも目次を紹介しておきます。
 第1章 謎解きの道具
 第2章 ホモ・エコノミクスを探して
 第3章 「目」と「評判」を恐れる心
 第4章 不公平への怒り
 第5章 脳に刻まれた“力”
 第6章 進化の力
 ・第1章では、行動経済学と進化心理学の概説と本書の構成が書かれています。
・第2章では、最後通牒ゲームの紹介と理論値と実験結果が違うこと、それがなぜそうなるのか、問題提起がされます。
・第3章以降はその謎解きとなります。ここでは、まず「分ける人」側からの分析と独裁者ゲームの実験など各種実験が紹介されます。サブタイトルは「なぜ独り占めしようとしないのか?」。
・第4章は、今度は「受取る人」の心理を分析します。アンフェアが許せない心理を様々な事例や実験から読み解きます。サブタイトルは「なぜ損をしてまでノー!と言うのか」。
・第5章で、進化心理学の知見が紹介されます。サブタイトルは「裏切り者は、見つけられ、覚えられ、広められる」というちょっと恐ろしいもの。
・第6章はまとめの章で、最後通牒ゲームの謎を「適応合理性」という概念でまとめます。つまり、一見不合理に見える意思決定でも経済人がもつ合理的な意思決定と矛盾するものではないという結論です。

③どこが役立つか?
 ・来年度からはじまる「公共」では、思考実験として囚人のジレンマやトロッコ問題が教科書に登場しています。最後通牒ゲームも授業のなかで取り上げる先生もいることと思います。そんな際にでてくる生徒の疑問に、この本は応えてくれるはずです。
 ・ネットワークが先頃発信した、コロナ教材のなかで、分類1(人権、法など)に区分した、1-1「コロナ禍と同調圧力」、1-2「コロナ禍の帰省を規制するには?」を取り上げる場合、本書の第3章が参考になると思います。「自粛警察」も第5章のコラムで取り上げられています。
 ・同じく、分類8(財政)での、特別定額給付金を巡る効率と公正の8-1から8-4までの教材、分類9(国際経済)の9-1ワクチン債の教材などは、直接最後通牒ゲームを扱っていませんが、利他性と利己性が判断に絡む問題なので、参考になると思われます。
 ・中学校では、道徳の授業で最後通牒ゲームをやってみることで、利己性と利他性を考えるきっかけとなるのではないでしょうか。

④感想
 ・最初にも触れましたが、高校生でも読める本です。また、専門的な知識を確認するためにも使えます。「もっと勉強したい方へ」の文献案内も役立ちそうです。そんな工夫が生きている本だと感心しました。読みやすいけれど、程度を落としていない、全力投球の本です。
 ・特に、感心したのは、「おわりに」の箇所での、著者の現在までの経歴が書いてある箇所です。経済学部出身ではないこと、大学(東大)にもぐりで受講した経済学の講義がきっかけで大学院に進学したこと。三人のお子さんを育てながら研究を続けてゆく際の迷い、そのなかで出会った進化心理学によって研究の新たなステージへ、というプロセスは読者に勇気を与えることでしょう。
 ・同じく「おわりに」にある、「小さな疑問をただひたすらに深掘りしてゆく、ふるえるような楽しさを少しでも感じてもらえれば」という言葉は、先の猪木先生の研究に対する姿勢と共振して、共感すること大でした。

(経済教育ネットワーク  新井 明)

①どんな本か
・ご存じ『国勢図会』の最新版です。
・今年で79版になっている超ロングセラーの本です。あまりにもポピュラーなので、紹介してきませんでしたが、改めてその活用方法などを提案してみたいと思います。

②どんな内容か
・全体は40章からなっています。冒頭は毎年特集が組まれていて、今年は「コロナウイルス感染症」です。
・第1章から4章までは、人口など基本的なデータです。
・第5章労働、第6章国民経済計算、第7章企業活動をはさんで、第8章から23章までは産業別のデータが扱われます。このあたりは、地理学習向けになるでしょう。
・第24章から26章までは、国際経済です。
・第27章から29章は、マクロ経済の物価、財政、金融などが扱われます。
・第30章から31章は、運輸観光、情報通信、科学技術なです。
・第33章から36章は、国民の生活で、家計や食生活、教育、社会保障などが登場します。
・第37章から40章は、環境、災害、犯罪、国防と続き、最後に長期統計が付録として付くという構成です。

③どんなところが役立つか
・まえがきに、「統計が示す事実をベースに物事を考えること考える事」は重要と書かれているように、基本的なデータをもとに生徒に変化や事態を読み取らせることは、授業の基本になるでしょう。
・部分、部分で使うのが一般的でしょうが、一度、ざっと全体を読んでみると、日本の現状が概観できて、頭の整理に役立ちます。
・官庁統計のように網羅的ではなく、整理されて掲載されているので、出てきている数字をもとに、今ならエクセルなどで、自作のグラフや図を作成することができるのではないでしょうか。一度挑戦されるとよいかもしれません。
・元データの出所が明記されているので、そこにアクセスして、データや発表資料の本元を探すことができます。
・おもしろネタが探せるかもしれません。例えば、漁業のところで、日本、韓国、中国、アメリカのなかで、一日一人あたりの魚介類消費量が一番多い国はどこかというようなクイズも作成できます。
・受験対策になります。大学入試では、さすがに『国勢図会』のグラフをそのまま出すケースはなくなっていますが、高校入試ではそのままではないとしてもベースとして結構使われているケースがあるのではないでしょうか。

④感想
・いままでは、学校の教科予算で毎年必ず購入してきました。久しぶりに自分で購入して一読してみて、ロングセラーの理由を再確認しました。
・この欄で、これまで紹介した岩波新書の『日本経済図説』や『世界経済図説』もハンディで捨てがたいのですが、いかんせん、図やグラフが小さいのが玉に傷。それに比べると『国勢図会』の大きさは丁度よいという印象です。

(経済教育ネットワーク  新井 明)

①どんな本か
・タイトル通り、金融を中心に1920年から100年間の日本経済の歩みを描いた本です。
・特に、証券市場や銀行システムの歴史のなかで何度か襲われる危機に着目して、その危機をどう乗り越えたか、その一連の対応がどのような言説となって、後の対応のなかで使われたのかを描いている本です。

②どんな内容か
・全体は、7章からなっています。
・第1章は、1920年の株価暴落から関東大震災の時期が対象です。
 第2章は、1927年の金融恐慌に焦点があてられます。
 第3章は、1930年の昭和恐慌とその克服について述べられています。
 第4章は、1930年代から40年代の株式会社の動向を時代の変化とともに描きます。
 第5章は、戦後の経済民主化から高度成長期における企業経営と金融の歴史が扱われています。
 第6章は、1980年代のバブルの発生と崩壊についてです。
 第7章は、1990年代の金融ビッグバンからアベノミクスまでのonly yesterdayが扱われています。
・全体を通して、二人の女性(ミツとマサエ)の物語が紹介されて、激変する時代を二人がどう生きたのかが、金融の歴史とともに描かれています。

③どこが役立つか
・通史としての歴史書ではなく、「ナラティブ」(人々のあいだでシェアされる何らかのビジョン、噂、あるいはスローガン)をキーワードとして、テーマとした出来事、それを巡る人物たち、どうしてそのような政策がとられたのか、その結果と影響は次の時代にどのように歴史的教訓として受け継がれたのかが書かれていて、ひと味違う歴史書となっています。
・ナラティブの例が、随所に出てきます。特に平成になってからの金融政策で歴史的なナラティブがどう政策を動かしたか、動かそうとしたかが指摘されています。それを読むことで、経済政策は世間の風によって動いている面があることがわかります。現在のコロナに対するナラティブも紹介されています。
・中学の先生だったら、1学期まで学習してきた近現代史の復習に、また、これから取組む経済分野、特に金融に関してのイメージづくりに役立つはずです。
・高校の先生だったら、歴史の先生に昭和恐慌の金解禁のところが分からないけれど、先生は公民だから教えてくださいと言われたときなどに手助けとなるでしょう。
・授業づくりの方法として、無味乾燥とされがちな経済、金融の場面で、人間を登場させながら展開してみようとするインセンティブを与える本になるかもしれません。

④感想
・まず、読み物として面白く読めました。このような構成で歴史を扱うこともできるのだという新鮮な印象を得ました。
・取り上げられている二人の女性(だれかは本書を手に取って発見してください)は1920年生まれ。先年97歳で亡くなった私の母は1921年生まれですが、早生まれなので、学年は二人と同じだったことがわかり、感慨深いものがありました。
・私が数年前に書いた、算数・数学と経済教育を扱った文章が参考文献ででてきてびっくりでした。だれかがどこかで見てくれているんですね。

(経済教育ネットワーク  新井 明)

①どんな本か
・近代日本の主な戦争を、財政、金融の資金面から分析した研究書です。


②どんな内容か
・扱っているのは、戊辰戦争、西南戦争、日清戦争、日露戦争、第1次世界大戦・シベリア出兵、日華事変・太平洋戦争、戦費借入の戦後処理です。
・それぞれ、どう戦費を調達したのか、予算はどう組んだのか、不足の時にはどうしたか、戦費の処理はどうなったかが扱われています。

③どんなところが役立つか
・戦争は政治史のなかで扱われ、戦費問題は、なかなか登場しませんが、お金がなければ戦争はできないという事実を生徒に紹介する際に、具体的な例をあげることができるという意味では参考になります。
・専門書なので、直接授業に役立つというより、拾い読みをして、関心のある箇所や使えるエピソードを探してみるとよいでしょう。


④感想
・個人的には、日清戦争の戦費問題にこだわりがあったので、少々お高い専門書でしたが購入しました。
・結果として、一般会計では酒造税は10%を占めているだけで、酒税で戦費がまかなえたという言説は間違いであることがわかりました。また、別会計の臨時の戦費調達には軍事債が発行され、公募もあるけれど、日銀が引き受けたり、預金部が全額ひきうけて調達したりしたことも同書でわかりました。
・事実を確かめるのは大変だというのが感想です。
・終章の戦費調達の終焉の箇所での、太平洋戦争の国債償却は、戦後インフレでチャラになったというところを読んで、今の政府の債務は将来のインフレでチャラになるのだろうかと考えてしまいました。
・満州事変が扱われていないので、満州事変の戦費はどこからどう出たのかが気になりました。満州事変を扱っていない理由が書かれていないのも不思議でした。
・日華事変と太平洋戦争という用語がセットになっている点も気になったところです。日華事変という言葉をつかうなら、大東亜戦争、太平洋戦争なら日中戦争じゃないのかとちょっと突っ込みたくなります。若手の研究者なるがゆえの、歴史認識のバイアスでしょうか。

(経済教育ネットワーク  新井 明)

①どんな本か
・雑誌『経済セミナー』の増刊本で、コロナ禍に対して、経済学がどのように対応しているか、どのような貢献をしているかをまとめた本です。

②どんな内容か
・全体は4つのパートに分かれています。
・パート1は、「経済学はパンデミックにどう対峙するか」というタイトルで、経済学者と公衆衛生学者の対談、感染症対策と経済活動の両立を分析するモデルをたちあげた二人の経済学者へのインタビューが掲載されています。
・パート2は、「感染症対策の経済学」のタイトルで、3人の経済学者による、それぞれSIRというマクロモデル、感染症疫学、行動経済学の論文が掲載されています。
・続く、パート3では、「新型コロナ危機が経済に及ぼす影響」というタイトルで、消費、労働市場、テレワーク、格差、教育、感染状況への認識、企業ダイナミクス、医療体制の現状分析の8本の論文が掲載されています。
・最後のパート4では、「新型コロナへの政策対応と評価」というタイトルで、先進各国、財政政策、労働者への支援策、特別定額給付金、小規模企業への支援策の各対応とその評価の5本の論文が掲載されています。

③どんなところが役立つか
・新規感染人数○○人、大変だ、緊急事態宣言、じゃあ動けない困った、などコロナに対しては目の前の情報に反応しがちですが、経済学者がこんな広範囲にコロナに向き合っていることを知るだけでも、経済学に対する信頼感が生まれる本です。
・ナッジの効果、ビッグデータによる生活様式の変化を取り上げた論考では、「へーそうなんだ」という事実が紹介されています。授業のネタに役立つ情報でしょう。

④感想
・活字が小さく、数式やグラフなども登場して正直かなり、読むのに躊躇するところもありましたが、それを超えると、役立ちそうだという部分がうかびあがってきました。
・北海道の山﨑辰也先生(北見北斗高校)は、いろいろなヒントが浮かび上がる面白い本と評価していました。ちょっと専門的ですが、夏休みなら手に取ってみる余裕もあるのではないでしょうか。

(経済教育ネットワーク  新井 明)

①どんな本か
・「ある雑誌で一番わかりやすい行動経済学の本として紹介されてるよ」と篠原代表から教示いただいた本で、「サクッとわかるビジネス教養」というシリーズの一冊です。

②どんな内容か
・全体は6章で構成されています。
・第1章は行動経済学の概論、第2章はヒューリスティック、第3章はプロスペクト理論、第4章はマーケッティングに活かす行動経済学の活用事例、第5章はナッジ理論、第6章はビジネスで役立つ応用法となっています。
・本文は少なく、カラーのイラストで直感的に理解できるようになっています。

③どこが役立つか
・消費者教育や金融教育の時間には、授業のネタに直接活用ができるでしょう。
・行動経済学そのものを経済の授業本体のなかに組み込むのはなかなか難しいところがあるので、この本のビジネスの成功事例を生徒指導や生徒の学習へのモチベーションアップのために使ってみるとよいかもしれません。

④感想
・大竹文雄先生の『行動経済学の使い方』(岩波新書)と併用して、こんな風にかみくだいたり、見える化したりすれば生徒が興味をもって取り組める授業がつくれるのかと感じることができる本かと思いました。
・「サクッと分かる」ことは、「すっと忘れる」という面もあるので、ここからさらに学問的に行動経済学の位置づけを関連の本で考えてみることも夏休みならではの取組みになろうかと思います。

(経済教育ネットワーク  新井 明)

①どんな本か
・日経新聞に2021年1月から連載された「逆境の資本主義」「コロナと資本主義」という特集のシリーズをもとに編集された本です。
・著名人のインタビューと解説をもとにした本なので、これも「サクッと分かる」本に分類される本になっています。

②どんな内容か
・全体は二部で、PART1は「逆境の資本主義」を、PART2は「コロナと資本主義」となっています。
・前半では、1さびつく成長の公式、2変質するくらし、3自由民主主義に試練の3章で、資本主義の停滞、デジタル化、証券市場の変質のタイトルで、現状の分析を扱い、関連したインタビューと各章末にnoteとして資本主義に関するイラスト入りの歴史を掲載しています。
・後半は、4パンデミック来襲、5再生への道の2章で、コロナ禍の企業、移民問題、政府の役割、所得保障を扱い、同じく関連のインタビューが掲載されています。

③どんなところが役立つか
・直接役立つというより、著名人のインタビュー35人分を読み、大きな意味での時代理解の手がかりを得るための本といえるでしょう。
・イラストの資本主義の歴史は、ざっくり理解するには手頃な内容。ただし、スミスの箇所など、スミスはこんな単純なことは言っていないよと突っ込みたくなるレベルであることは承知しておきたいところです。

④感想
・日経新聞が「資本主義」という用語を使い、その危機をテーマにするなんてと思ったので手に取りましたが、結果としては資本主義の進化を目指すという経済新聞ならではの結論の本でした。
・それでも、環境問題、格差、短期利益を目指す株主資本主義批判など、取組むべきテーマが浮かび上がる本にはなっています。
・気になった論者の本をさらに探して、本格的に資本主義の問題に挑戦して授業を組み立てる先生、出でよ!などと叫んだら時代錯誤か。

                                               (経済教育ネットワーク  新井 明)

                                                   

①どんな本か
・加藤一誠先生(慶應義塾大学)他3人の先生方が編者となって作成された航空・空港に関する現状と課題を展望した本です。
・サブタイルに「アフターコロナを見据えて」とあり、昨年来のコロナによる航空産業、インバウンド問題などの激変を踏まえた最新の記述になっています。

②どんな内容か
・全体は5部、序章と終章と本文25章で、全27章からなっています。
・第Ⅰ部は航空需要の増大と対応、第Ⅱ部は受け皿としての航空活用、第三部は航空・地域の持続可能な経営、第Ⅳ部は効率の基盤となる問題、第Ⅴ部は今後の航空・空港の論点という構成で、航空・空港を巡る論点がほぼカバーされています。

③どこが役立つか
・高校公民科では直接航空産業や空港を扱うことはありませんが、競争や地域の活性化のケーススタディとして使うことができそうです。
・地理では貿易、交通、観光など飛行機や空港に関する問題を直接扱います。地理が必修になって、担当される先生もでてくると思います。その際の授業づくりの参考として活用できるでしょう。
・地域課題の研究で探究活動を行う場合、扱われている事例(佐賀空港など)を参考にして調査などを行うヒントになるでしょう。

④感想
・序章で、航空産業と国の特別な関係が指摘されています。そうなんだ、確かにという感想を持ちました。
・また、羽田空港の発着枠(スロット)の配分が、政府の委員会での配分で、オークション方式でないことが課題として指摘されていて、航空産業や空港の特殊性を感じました。
・終章の対談で、そら(空港)とうみ(港湾)を一体として議論しているところが印象的です。貿易品の取り扱い高のクイズで、引っかけ問題として登場する「みなと」には二つあり、関連していることが分かります。

                                                   (経済教育ネットワーク  新井 明)