内容の概略
・『サピエンス前史』で人類の歴史を扱い、『ホモデウス』人類の未来を扱って話題になったイスラエル生まれの歴史学者が、現代及び近未来を対象として21のテーマで、現代の私たちが直面している問題を扱っています。
・21のテーマは大きく五つに分類されています。
Ⅰはテクノロジーの難題のタイトルで、幻滅・雇用・自由・平等の4つが扱われます。
Ⅱは政治の難題で、コミュニティ・文明・ナショナリズム・宗教・移民の5つが、
Ⅲは絶望と希望で、テロ・戦争・謙虚さ・神・世俗主義の5つが、
Ⅳは真実で、無知・正義・ポストトゥルース・SFの4つが、
そして最後のⅤはレリジエンス(対応)で、教育・意味・瞑想の3つが扱われ合計21となっています。
・直接経済に関するテーマが登場しているわけではありませんが、ハラリが現在の直接の危機としている、核戦争、生態系、テクノロジーの三つはいずれも何らかの形で経済と関係があるとみることができるでしょう。また、自由を扱った箇所では自由主義のセットメニューとして経済問題が登場します。

授業で使えるところ
・多くのテーマが、高校の「現代社会」「公共」の内容とオーバーラップしています。格差、情報、環境、労働などの学習でそのままハラリの問題提起を生徒と一緒に考えることができるでしょう。
・もちろん、「政治・経済」でも「倫理」でも扱える素材が沢山でてきます。(例えば自動運転の問題など)
・中学校でも、同様に扱うことができるでしょう。

感想
・マクロ的、人類史的に今の世界がどこに進もうとしているのかの大きな展望を得ることが出来る本でしょう。社会科や公民科がこまかなテーマ主義におちいって見えなくなってしまった視野を回復するヒントがある本だと感じます。
・今回のパンデミックに際して、アメリカのトランプ政権がWTOへの拠出を停止したことに対して、ハラリは100万ドル(約1億円)をWHOに寄付したそうです。思索するだけでなく、行動する思想家です。
・3月31日の日経新聞に「全体主義的監視か 市民の権利か」のタイトルで寄稿しています。また、NHKのEテレ特集のインタビュー(4月26日放映)にも登場して、現在のパンデミックとそれへの対応を語っています。     

                                          (経済教育ネットワーク  新井 明)

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