執筆者 新井明

三学期制の学校は中間考査が終了した時期だと思います。先生方はテスト問題の作成、採点と平常勤務もあり、目の回るような忙しさのなかにいるかと思います。

 テスト問題には、その先生の日頃の授業がストレートに反映されています。単純な知識問題は別として、これは生徒に伝えたい、考えさせたいと工夫した授業がどの程度生徒に定着しているかという部分がテストには詰まっています。夏の経済教室(東京高校)でも大杉昭英先生からテストのつくり方のレクチャーがありました。すべての問題を大杉先生が紹介したような工夫されたものにすることは難しいとしても、そういう種類の問題を一題でも入れたテストとしたいものです。

 経済分野を教える公民科や社会科公民的分野は担当者が少数、もしくは一人の学校が多いはずです。そうなると、他の人たちがどんなテストの工夫をしているかなどが見えません。そこで、テスト問題をみんなで検討するために、ネットワークの大阪部会や札幌部会ではテスト問題の持ち寄りがはじまっています。ネットワークの「オープン討論室」などをつかって、情報交換もよいかもしれません。できれば、結果なども紹介されると役立つものになりそうです。

 ちなみに、新井の中三公民の中間考査では、

 ①日常生活もしくは経済の問題のなかで機会費用に関係する事例をあげて、②見えるコスト、③見えないコスト、④見えるベネフィット、⑤見えないベネフィットを区別して、⑥どうすれば最もよい選択がえられるかを述べなさい。(6点配当)というような問題を出しました。

 これは、経済学習の冒頭で機会費用の考え方を紹介しておいたのでその定着度を見る問題です。事前にこんなテーマで考えておきなさいという「傾向と対策プリント」を配付して準備をしておくように指示しています。ほとんどの生徒が、テスト前に勉強するかゲームをやるか、授業中の内職とか、大学進学をするかなどの事例で分析を書いていました。

 ほかに、価格と需要量、供給量の関係が次のようになっている時、①均衡価格と②均衡取引量を求めなさい。③そのときの式も書くこと。(6点配当)

  価格  10 30       価格  30 70  
  需要量 30 10       供給量 10 15

 というような問題も出しました。前回(10月号)、紹介したようなクラスでの価格実験をしたうえで、似たような計算問題を紹介しておいて解答例を配付した上の問題です。生徒はすでに連立一次方程式を学んでいますから、その応用の問題でもあります。これはさすがに正答率は5割強で、抽象的に理解することの難しさが分かります。また、中三に学習指導要領を逸脱したこんな問題をやらせることの無謀さも出ているかもしれません。

 このテストは、高校入試のない中等教育学校での事例です。全国の先生方が多様な生徒をまえてどんな授業をやっているかテストを通して情報交換ができるといいですね。

 なお、東京都公民科・社会科教育研究会の紀要50号では、定期テストの検討という企画のなかで、東京の高等学校の先生方の定期考査問題が資料として掲載されています。

(メルマガ 70号から転載)

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