執筆者 新井明

実験経済学が注目されていますが、今回紹介するのは非常に単純な実験です。教科書には中学、高校とも需要曲線と供給曲線が載っています。それが本当に成り立つのか、教室で試してみるというものです。

 やり方は、ペットボトル一本を用意して、これをいくらだったら買うか、いくらだったら売るかを生徒に紙に書かせるだけです。情報として、売り手にはコストとして60円がかかるという前提を話しておきます。また生徒には、回りと相談しないで自分の見解を書くようにと指示をしておきます。40人クラスだと、半々に分けると結果が良く見えるでしょう。

 中学3年生の教室で実際にやってみました。
 買い手は、68円1人、以下70円1、80円5、85円1、90円2、99円1、100円5、160円1、170円1でした。
 売り手は、75円1人、以下78円1、80円1、90円1、99円1、100円1、108円1、110円1、115円1、120円3、130円4、140円1、162円1、180円1となりました。

 これをもとに需要曲線(階段状になります)を描き、供給曲線(同じく階段状です)を描くと、右下がり、右上がりの曲線が描け、二つを重ねると均衡価格が出てきます。この場合は、均衡価格100円で取引数量は7個でした。なお、グラフは時間があれば生徒に実際に書かせるといいのですが、それだけでかなりの時間を食ってしまうので、実験だけをして、グラフは教員が書いて、次の時間に示しました。高等学校で「情報」などを学習済みでエクセルなどが使えれば、それでグラフを書いてみせるのもお勧めです。

 教科書で模式的に表現されているものが、教室でも実証されたので生徒は納得です。同じような実験を3クラスにも行い、ほぼ同じ結果が得られました。ただし、上例のように、ドンぴしゃりで数字は一致せず、100円前後という結果ですが、実験で確認されるという意味は大きいと思います。

 ここから、大阪の李先生が実践されているように、市場のメカニズムの説明をして、それが十分に機能しないときはどうするか、また、ペットボトルでいえば、場所によってどうしてこんなに違うのか、その秘密は何かなど様々な発展が可能になります。
 市場実験はもう少し複雑なものもありますが、これは簡単な実験ですから一度試みてください。

(メルマガ 69号から転載)

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