■(中学校)  「ドラえもん」とともに
 執筆者 小谷 勇人(春日部市立武里中学校)
「四次元ポケット」を持とう
 中学校では授業開きはどの学年であろうとタイミング的に地理か歴史となり、経済を取扱うチャンスは中々ありません。でも、社会科全体に関わる話として経済と絡めることは可能であるので生徒に強く印象づける仕掛けを組み込みたいものです。
 まずは、「なぜ社会科を学ぶのか」という話は必要です。私が授業開きによく伝えることは、過去・現在・未来を串刺しにして地理・歴史・公民の学習のそれぞれの役割について説明します。
 よく「ドラえもん」を例にし「自分の中に四次元ポケットを持とう」という話をします。
地理学習は「どこでもドア(空間的認識)」、歴史学習は「タイムマシン(時間的認識)」といった具合です。この地歴の学習が土台となって公民では現代社会の学習をしますが、加えて「未来を構想することが大切」と話します。
 その際、大きな判断材料となっていくのが、政治(人権含む)と経済の学習になることを伝えます。
中学1年生入学時であったら遠い話に感じるかもしれませんが、卒業時のゴールまで見通して生徒が社会科を学ぶ理由を教えたいものです。

タイムリーな事例を
 社会科を学ぶ理由を伝えたら、生徒の印象に残る事例を紹介しましょう。
先生の中で鉄板ネタがあればよいですが、なるべくタイムリーなもの、現在だったらウクライナへのロシア侵攻が生徒には分かりやすいかと思います。
ウクライナ侵攻というキーワードを真ん中にして、「地理」「歴史」「政治(人権含む)」「経済」の語句を配置した枠をワークシートに入れて生徒に考えさせると「なぜ社会科を学ぶのか」という理由に自然と行きつくと考えます。
 例として、「経済」の枠ではロシアがウクライナに入るパイプラインの通過料を自らの手で管理したいと考えていたことには指摘したいです。
今ならタブレット型端末を活用して資料を見つけながらグループで話し合うことも容易です。事例は毎年タイムリーなものにして授業びらきの際に行うと、卒業までに3回できます。どんな事例をあげたとしても経済は「なぜそのようなことが起こっているのか」を理解する大きな根拠になることでしょう。
 中学1年生のスタートから経済に関する学習の積み重ねが、最終的に中学3年生の経済単元の学習で大きく花開きます。教師の方からこぼれ話的に小出しにする程度でも構いません。特に教えていて地理と歴史の学習には随所に経済が見え隠れしていると実感しています。
 授業開きから種まきを始めていきたいですね。

■(高等学校)  つかみは「コンセンサスゲーム」
執筆者 中山諒一郎(昭和学院中学・高等学校)
いきなりゲーム
 年間の授業びらきには2コマを割いています。
1コマ目は、「コンセンサスゲーム」です。自己紹介などはさらっと簡単に行う程度(今年度の授業を担当する中山です。よろしくねー!くらいの感じです。)で、あえてすぐにこのゲームに入ります。年によって、砂漠で遭難してもらったり雪山で遭難してもらったりします。
なぜいきなりゲームから入るのか?それは、一番には「生徒を惹きつけるため」です。
講演やプレゼン、スピーチでも「つかみ」は大切であるように、年間の授業でも同様だと考えています。いきなりよく知らないおじさんが自分の紹介を始めても、生徒たちが引き込まれるとは思えません。そこであえていきなりゲームから始めることで、「なんとなくこの授業は他とは違いそうだな」とか「面白そうかも」という雰囲気を醸し出します。
そうして初めて、彼らはこちらの話をきいてやってもいいじゃないかと思い始めます。
このゲームにはあと2つほど隠れた狙いがあります。
一つは、ゲーム内でのファシリテーションの様子で授業者の人となりを感じ取ってもらう(自己紹介代わり)こと、もう一つは、この授業の手法を感じ取ってもらう、ことも意図しています。

学ぶ意義と手法を
 次に、2コマ目です。ここでは①自己紹介 ②学ぶ意義(なぜ学ぶのか?)について ③学ぶ手法(この授業はどのように進めるか?ルールや目標は何か?)の3つが主な内容です。
最初にスライド数枚分くらいの自己紹介をします。
その上で、なぜ学ぶのか?をソシュールの言語論(言葉を獲得することは世界の見え方を獲得すること)などを用いつつ考えていきます。
ここでは、「虹の色は何色か?」などの問いかけを入れながら、周囲の仲間と対話しながら学ぶ理由を考えてもらいます。
その上で、「この科目を学ぶ理由」については、これから1年間の授業の中で一緒に考えていこう、と呼びかけます。
また、学び方については、「この授業では今までおそらく多くの授業で約束事になっていたことはすべて破るくらいの気概をもとう!」と話し、授業中は基本的にいつでも立ち歩いてよいこと、机と椅子にとらわれる必要はないので、教室内のどこで学んでもよいこと、どんどん周りの人と話したり、教えあったりしてほしいことなど、態度目標を共有します。
 この目標は以後毎時間黒板に掲示し、毎回授業終わりに記入させる「振り返りフォーム」で自己評価させています。
実は、1年間の最後の授業では、「最後に改めて学ぶ理由を考えよう」という授業を行っています。
そこでは1年間の授業の内容をざっくりとハイライトしつつ、そこで獲得した「見方や考え方」「その考え方が私たちの人生にどう関わるのか?」などを取り上げていき、それが「この授業を学ぶ理由であったこと」を伝えます。いわば「伏線回収」の授業です。
 そこには「この授業を学んできた意味がわかった」「この授業の態度目標の大切さがわかった」などのコメントをほとんどの生徒が残してくれていて、多くの生徒に腹落ちしてもらっているのかなと思います。
 ちなみに、1コマ目の「コンセンサスゲーム」はこちらの紹介などを参照してください。
 

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