①どんな本か
 フランス社会経済史の専門家である著者が、自身が書いた新科目「歴史総合」の教科書を素材に、歴史を面白く勉強するためのコツを歴史学の歴史から説いた本です。

②本の内容は
 歴史って、面白いですか?と問いかける「はじめに」からはじまります。
 第1章「高等学校教科書を読んでみる」では、自身が書いた歴史教科書の一節(産業革命)を素材にその理由を探ります。
 第2章「「歴史を学ぶ」とはどういうことか」では、19世紀ランケからはじまる実証主義の歴史学が歴史教科書の面白くない根本理由であることが紹介されます。
 第3章「歴史のかたちはひとつだけじゃない」では、フランスのアナール学派、イギリスの労働史学、アメリカの世界システム論、日本の比較経済史学が実証主義の批判として取り上げられています。
 第4章「歴史学の危機とその可能性」では、1970年代からの言語論的回転と歴史学、ポストコロニアリズムが取り上げられます。
 第5章「世界がかわれば歴史もかわる」では、著者が時代の節目と考える1989年以降の歴史学の動向を記憶研究、グローバルヒストリー、パブリックヒストリーから紹介しています。
 そして、「おわりに」で全体を総括しつつ、もう一度教科書を読み直し、本文はランケ流の実証史学であるけれど、資料やコラムから生徒が歴史を自分のものとして考えるヒントがつまっていると結論づけます。

③どこが役立つか
 第1章と「おわりに」のところで、「歴史総合」の教科書の叙述を取り上げて、それがなぜつまらなくなっているのか、また、そのつまらなさを超える視点は何かを説いているところが、授業をやる先生にとっての「トリセツ」になっています。
 史学史の潮流をランケから現代まで、わかりやすく、コンパクトに、そして歴史教科書の記述と関連させて書いています。なかなか類書にはない記述です。
 ウオーラーシュテインやサイードなども登場します。公民の先生方にとっては歴史の先生との会話での共通項が生まれるのではないでしょうか。

④感想
 プリマーブックなので、読者は高校生のはずですが、これは歴史を教える教員向けの本です。「歴史総合」を担当しなければならなくなった公民の先生にとっての良質なトリセツ本だと思いました。
 教科書の記述のつまらなさから始まっているので、教科書批判にゆくかと思っていたら、自分が書いた部分であることを第1章の途中でばらす構成になっていて(p35)、「あれま」と紹介者もだまされました。なぜつまらないかの三つの理由の一つ、上から目線から分かったようなことを述べるというのは、納得です。
 この本の歴史の部分を全部経済と置き換えたらどんな本になるのか、何を「経済学のトリセツ」として先生方に伝えるべきか考えさせられました。

(経済教育ネットワーク 新井 明)

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