①どんな本か
・ロシアによるウクライナ侵攻が経済やビジネスにどんな影響を与えるのか、侵攻1ヶ月目の時点で経済雑誌がまとめたレポートです。
・ウクライナ危機を巡る軍事や政治の動きは日々報道されていますが、経済やビジネスに関するまとまった情報は多くはありせん。その穴を埋めるために活用できる本です。


②本の内容は
・まえがきで、編者の日経ビジネスシニアエディターの森永輔氏はウクライナ危機を、大国と大国が戦争する時代がはじまったこと、経済を武器とした戦争であること、東アジアの安全保障政策に影響を与えるという三つの視点から見る必要があると書いています。
・それをうけて、全体は8章で構成されています。各章のタイトルと扱っている内容を紹介しておきます。
 Ⅰ甦る冷戦(総論)、Ⅱ黄昏の帝国(ロシアの動向)、Ⅲ隣国の脅威(欧州の対応)、Ⅳ各国のジレンマ(欧州以外の世界の対応)、Ⅴ未来なき戦い(経済断絶の可能性)、Ⅵ知られざる戦場(サイバー、先端技術の戦争)、Ⅶ資源混迷(日本の動き)、Ⅷ戦略転換(日本企業の対応)


③どこが役に立つか
・国際社会を経済面から扱う場合、具体的な事例を紹介する際にネタ源として役立つでしょう。
・例えば、航空機でいえばロシア上空を飛ぶことができなくなったための対応をどうしているのかなどは、Ⅷの戦略転換の「JALはシアトル経由パリ便も」のところで紹介されています。これは地理の学習でも活用できるネタでしょう。
・その他、LNGの争奪合戦、電気料金、ユニクロなどの小売業の対応など事例豊富です。
・金融制裁、貿易の制限など、グローバル化の逆進行についても触れています。国際経済を扱う際に参考になるはずです。
・ただし、この本の内容は今年の5月時点までのものなので、その後の推移をフォローする必要があります。


④感想
・日頃あまり目を通すことが少ないビジネス雑誌が授業の情報源として意外に役立つことを実感します。
・政治に比べるとビジネスは、かくあるべしという正義より変化する状況を前提としてそのなかでどう生き延びるのかというプラクティカルな対応で動いていることが実感できます。
・ウクライナ戦争は長期化が懸念されますが、軍事面、政治面だけでなく経済戦争の面がどう推移してゆくか注目したいと思いました。

(経済教育ネットワーク 新井 明)

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