①どんな本か
・経済学の知見をビジネスで活かす経済学者の活動内容の内容とインタビューをまとめた本です。キーワードは経済学の社会実装です。
・紹介されている事例は、マッチング、マーケットデザイン、プライシング、モデル分析、因果推論、構造推定で、日常的に私たちが接している広告や価格設定やコロナ感染のモデルや健康経済学などです。


②本の内容は
・次の著者がそれぞれのテーマで報告しています。
第1章 坂井豊貴(慶應義塾大学)「急進する経済学のビジネス活用」 総論です。
第2章 渡辺安虎(東京大学)「ビジネス課題を経済学で解決する」 社会実験とミクロ経済学の最新研究とビジネス活用です。
第3章 成田悠輔(イェール大学)「DX2.0」 デジタル社会のこれからを提示しています。
第4章 仲田泰祐(東京大学)「経済分析を感染症対策と経済活動の両立に行かす」 コロナ感染時のデータを基にした経済分析事例です。
第5章 野田俊也(東京大学)「マーケットデザインで考えるスマートコントラクトの未来」 スマートコントラクト(契約)の紹介です。
第6章 上武康亮(イェール大学)「経済学をマーケッティングに活かす」 マーケッティングと経済学の関係が紹介されています。
第7章 小島武仁(東京大学)「マーケットデザインが組織を変える」 マッチングアルゴリズムの活用例が紹介されています。
第8章 井深陽子(慶應義塾大学)「景気変動と健康」 データサイエンスと健康の関係が紹介されています。


③どこが役に立つか
・学校にいるとわからない経済学とビジネスの関係、社会実装の挑戦の様子をうかがい知ることができます。
・当然、授業に直接役立つ内容、ネタとして仕入れる内容はほとんどありませんが、第一線の経済学者が今どんな関心をもってどんな研究をして、それが現実にどう活用しようとしているかがわかります。
・大竹先生の行動経済学の活用法は主に公共政策に関する事例が多かったのですが、こちらはビジネスに直接関係しているケースで、活用といっても違いが分かる意味で参考になる本です。


④感想
・取組んでいる内容は、それぞれちょっと頭がクラクラするような内容ですが、各章末にある、なぜ経済学を学んだのか、そしてどうしてこのような研究をしたのか、若い人たちにむけたメッセージなどを質問しているインタビューはとても面白く読めます。ただし、成田悠輔氏のものが無いのは残念。
・セミナーでの講演記録をまとめたものなので、内容は難しくとも通読可能です。章末のまとめ(ポイント)も日経の経済教室欄(Analysis)風に三つに絞っていて、編集手法も参考になります。
・内容的には、成田悠輔氏のものが22世紀社会の構想まで語る少々ぶっ飛んだ内容で、ネット上で話題になるのがよくわかりました。

(経済教育ネットワーク 新井 明)

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