①どんな本か
・データサイエンティストで医療経済学者である著者が、命の価値について、様々な角度から分析、紹介した本です。
・取り上げられているのは、同時多発テロ被害者の補償金の違い、裁判での命の価格づけの様々なケース、費用便益分析による命の計算、企業による命の計算と労働市場、生命保険、医療費を巡る命の値段、子育ての値段、認知バイアスによる命の価値の違いなど、数多くの事例と分析です。


②役立つところ
・高校新科目「公共」の「公共の扉」の箇所、「倫理」の現代の諸課題の生命の学習の部分で直接に使うことができるでしょう。また、経済学習のなかでも財政、環境、社会保障などを扱う箇所で使える事例が登場します。
・著者の言う、人命には日常的に値札が付けられていて、その値札が私たちの命に予期せぬ重大な結果をもたらすこと、こうした値札の多くは透明でも公平でもないこと、その公平性の欠如が問題であることを実感するところから、生徒への問いかけが始まる内容です。
・思考実験の例で採り上げられる「トロッコ問題」が「トロッコ問題の問題」として分析されています。ここからは、思考実験だからといって安易に取り上げる危険性が浮かび上がります。


③感想
・評者は、「あなたのいのちの値段はいくらですか?」という問いを、教育法の授業などで問いかけて、そこから経済と倫理の関係の授業づくりの話をしてきました。
・生命倫理を経済の観点からも取り上げることができる、また、必要なことであるということを改めて感じさせてくれる本でした。
・事例はほとんどがアメリカの例ですが、日本だったらどうだろうと比較をしながら読むことを勧めます。

(経済教育ネットワーク  新井 明)

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