執筆者 新井明

試験は、出題者である先生が生徒に対して、こんな知識が分かっているかとか、 こんなテーマに関してどう考えているかを確かめるための方法です。そこでは、 出題者と解答者がある意味上下関係から成り立っているのが普通です。今回のヒントは、それを逆転させてみたらという話です。

(1)生徒がテスト問題の原型をつくった
テスト問題に関して、昨年末の「冬休み経済教室」で、杉浦光紀先生の発言のなかで、興味深い部分がありました。定期考査に出題した論述問題が、生徒が自習時間 の課題で作ったものを母体として作成したというところです。生徒の立場からすれば、テスト問題は、たとえて言えば、ご主人様から家来にご下問が下るという関係の、受け身の作業と言ってもよいでしょう。 それを自分たちが作ることができるということは、家来から主人になるという逆転現象です。主体的な学習という言葉がスローガンになって授業案や実践報告には登場しますが、生徒が本当に主体的になるというのは、よほどのことでなければないというのは先生方なら実感していることだろうと思います。 それが生徒に試験問題を作成させることで、比較的簡単に実現出来る可能性があることが、杉浦報告からわかります。

(2)まずは四択問題から
生徒にテスト問題を作成させる場合は、まずは四択問題からがよいでしょう。共通テストの試行問題で言えば、アダムスミスに関して正しいものはどれかという「現代社会」の問題がありました。こんなかたちで、生徒に四択の選択肢を作らせてみたらどうでしょう。
この作業はグループ学習に適しています。四人一組だと、正答の文章を四人が一つずつ作る。それを持ち寄って、みんなで吟味します。次は誤答つくりです。どこをどう間違えるようにすればよいか、誤答作成の過程で、出題のコツのようなものをつかむことができるでしょう。これは主体的学習でもあり、テスト対策にもなります。

(3)次は読み取り問題
四択問題作成の延長でできるのはデータやグラフの読み取り問題です。
これはすでに出題された入試問題などからもってきてもよいし、授業で使ったデータを使っても良いでしょう。四択問題と同じように、グループでこのデータから読み取れるものを一人一つ出し合い、それを問いの形にしてゆけば、いいわけです。今年のセンター試験の「現代社会」で言えば、大学入学者数の関係学科別男女のグラフがあります。試験問題では、グラフから何が読めるかの選択問題でしたが、ここから日本の大学教育、さらにはこのような実態をどう考えるか、修正の必要はあるのか、修正するなら何が必要かなどの「問い」を立てることができたら、十分な学習課題を自分たちでたてたことになります。

(4)もっとひろげると
四択、読み取りの次は論述問題です。場合によってはこちらの方が作るのはやさしいかも知れません。使うのは高校生だったらセンター試験、もしくは共通テストの試行問題のリード文になります。場合によっては教科書の本文を使っても良いかもしれません。一番簡単なのは、まとまったリード文を読ませて、ここから100字とか200字の論述問題を作成させることです。問題作成のためには、リード文の主題が何である
か、そこからどんな「問い」が出てくるかを考えなければいけなくなります。まとまった文章の読解力、分析力が求められます。
もっと応用だと、リード文をもとにした、対話文をつくらせて、そこから「問い」を作るという作業を行なわせても良いでしょう。これには相当の学力が求められるでしょうが、私たちが定期考査などで行なっている作問のプロセスを生徒に行なわせる、もしくは一緒に考えてみるのも主体的な授業づくりの道になるでしょう。

定期考査直前にこの作業を行なわせて、そこから何題か出題するよと予告しておくと、生徒の取組みに対するインセンティブが格段に上がるでしょう。でも、こんな人参を目の前にぶらさげるのは、やりすぎかな。

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