執筆者 新井明

 若い公民の先生に聞かれました。「金融で日本銀行の金融政策の個所になったらてきめんに生徒の授業への関心がてきめんに下がるのがわかります。先生どうしたらいいでしょうね」。

 たしかに、日本銀行の金融政策は生徒にとっては遠い世界の話かもしれません。だいたいコール市場のオーバーナイトものの金利なんて、聞かされてもピンとこないのは当然かもしれません。教えている教員だって、知ったかぶりなんですから。
 でも、そこで終わっては教育になりません。若い先生には三つ提案をしてみました。

 一つは、自分が日銀の政策委員になって、日本経済の各種データを踏まえて政策決定を行うシミュレーションを作ってみるということです。これはかなりレベルの高い生徒向けです。
 政策は、金利を上げる誘導をするか、それとも現状のままでよいか、下げるかの三つでよいでしょう。経済の現状からどんな性格が必要かを自分が決定してみるという体験は金融政策の担い手になった気分になるという意味では貴重な体験になるのではというのが提案1です。

 次は、もし日銀(中央銀行)なかったらという想定をさせることです。これは歴史好きが多いクラス向けです。
 ヒントは、アメリカの国法銀行制度、日本の国立銀行の時代です。NHKの朝ドラ『あさが来た』にも主人公の広岡朝子の実家の三井家が第一国立銀行の設立に参加するエピソードが取り上げられています。今は、発券銀行は日本銀行だけというのが当たり前になっていますが、そうでなかった時代にどんなことが起きていたのか伝えるだけでも金融政策に少しは関心が向くかもしれません。

 三番目は、実物といっても模擬紙幣で構わないのですが、模擬紙幣を使ってヘリマネ(ヘリコプターマネー)を実演することです。これはどのクラスでも使えます。
 貨幣数量説がどこまで正しいのかは議論がありますが、教室を半分にわけ、片方には二倍の紙幣を持たせたら何がおこるかを実験してみることで、マネーストックと物価の関係を実感させるという方法です。その意思決定をするかどうかという政策問題と結びつけると少しは関心が高まる可能性ありです。

 二番目は、政策ではありませんが、手をかえ品をかえて、正確な知識を教え込もうと頑張るだけでなく、生徒の関心を高める工夫をしてみたらというのが若い先生向けの提案です。
 はたして、質問者はどれかをやってみたかな。

(メルマガ 95号から転載)

Tags

Comments are closed

アーカイブ
カテゴリー