執筆者 新井明

 ゴールデンウイークも終了しました。この間、旅行に行った先生方は宿泊代が高くなったことを実感したことだろうと思います。

 さて、この現象を経済の授業で使うにはどんなやりかたがあるでしょうか。教科書に登場する需要曲線と供給曲線を使ったらどう説明できますか。
 この現象、中学校の教科書にあるグラフでは十分説明しきれません。高校で登場するシフトでなんとなく理解できるところまでゆければ上出来かもしれません。その際にも、教科書にある右上がりの供給曲線は垂直に近いものになっているのでのでかなりの説明が必要になります。

 同じゴールデンウイークのスーパーマーケットは普段より閑散としていました。たぶん閉店間際の値引きも結構あったかもしれません。この閉店前の値引きという現象はどう説明できるでしょうか。
 こちらは教科書にある需要供給曲線で説明が可能です。それでも供給曲線は右上がりとは言えない場合もあることになります。

 価格の変動に関して、このような違いがあるにもかかわらず、ある中学の教科書では「商品の価格はどうして高くなったり安くなったりするのだろう」という問いかけをしています。そしてくだんのグラフが同じページに登場するのです。
 私たちがよく見るこのグラフは完全競争市場でつくられたモデルとしてのグラフです。その説明がないので、現実の現象の説明をこのグラフでいきなりおこなおうとして混乱や困惑が生じるというわけです。

 だから、中高の段階で経済を理解させるならグラフはいらないという主張もでてくるわけです。
 もし、このグラフを使おうとする場合は、グラフのなりたちと性質を理解したうえで、限界をわきまえたうえで使いたいものです。それをやらないと、複雑な現象を単純化して本質を理解するための道具というグラフ利用の可能性を閉じてしまうことになりかねません。それは、ちょっともったいないと思うのですが、いかがでしょうか。 

(メルマガ 88号から転載)

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