執筆者 新井明

 追試は追試験ですが、生徒だとあまり有難くない言葉です。でもここでは追試行の意味で使っています。

 何を追試するか。それはこれまで報告されてきた各先生方の授業実践です。授業は個別一回性のものですが、それでもコアとなる理論やねらいは共通するものがあるはずです。また、小ネタといわれる導入のネタや、大ネタのテーマ学習などもみんなで共有することはできるはずです。

 授業の実践報告では、成功した「すばらしい」実践が報告されることが多いのですが、本当にそれが可能になるのかは、みんなでよってたかってやってみて試してゆくことが必要になります。それがここで言う追試です。

 例えば、東京部会では宮尾尊弘先生(国際大学)が大学でのミクロ経済学で実施した「繰り返しゲーム」の実践があります。それがコアとなって、升野伸子先生(筑波大学附属中)の中学校での財政の授業での「ゲーム」の実践が報告されました。これは使えるという内容です。それをうけて新井(小石川中等教育学校)が今度は高等学校1年生の総合学習で、国際理解のテーマで実践するという報告がされています。

 コアとなるのはゲーム理論です。ミクロ経済学ではゲーム理論で市場のメカニズムを発見させてゆこうとします。中学高校では、ゲーム理論そのものを教えるというより道具として使ってゆこうとします。まさに中高大が連携して追試を行っています。

 河原先生(立命館大学ほか)らのネタ研での実践報告もこんなかたちでみんなで追試をして使える教材として蓄積されていると思います。

 カール・ポパーは理論が科学であるのは反証可能性があるかどうかであるとしましたが、授業実践が本当に意味があるかは追試で検証してはじめて成り立つのかもしれません。

(メルマガ 62号から転載)

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