シンポジウム「経済教育と法教育の対話その3」を開催しました(2014/3/22)

経済教育シンポジウム「経済教育と法教育の対話その3:法と経済の教え方」

■日時:2014年3月22日(土) 13時30分~17時00分
■場所:同志社大学 寧静館 5階

【プログラム】

13:30~13:35 開会挨拶

13:35~14:45 第1部 提案:法と経済の教え方
                   篠原 総一(同志社大学経済学部教授)

14:50~16:50 第2部 パネルディスカッション: 法と経済をどう教えるか
 コーディネーター      中川 雅之(日本大学経済学部教授)
 パネリスト:法教育から   野坂 佳生(金沢大学大学院法務研究科教授)
       高校から    藤井 剛 (千葉県立千葉工業高等学校教諭)
       中学から    兼間 昌智(札幌市立定山渓中学校教頭)

16:50~17:00 統括挨拶    

【内容の要約】
前2回の経済教育シンポジウムでの成果を踏まえて、今回のシンポジウム「経済教育と法教育の対話その3」では、「法と経済との考え方」および「法教育と経済教育の関係」を、教育の現場でどう扱って教えていくべきかについて、具体的な提案や実践例が示されるとともに、重要な問題点もいくつか指摘された。
 まず第1部の「提案:法と経済の教え方」については、経済教育ネットワーク代表の篠原総一同志社大学教授から、「『仕組み』で学ぶ法と経済」というテーマで、経済社会を教える場合について提案があった。それは、そもそも中学や高校の「経済社会」で目指すものは、社会の「仕組み」(成り立ち)を理解し、その仕組みがうまく機能しているかどうかを考えることであるとして、その仕組みのうち、今回はとくに「分業と交換」に焦点を当てて、何を教えるべきかについて具体的な内容の提案があった。

 例えば、市場の仕組みについて、自由な取引を支える条件としての法の目的などについて、教科書でもっとよく説明する必要性が指摘された。結論として、社会の仕組みや成り立ちを学ぶには、社会の経済的な側面も法的な側面も知る必要があり、経済教育と法教育など多面的な相互理解と共同作業が欠かせないという点であった。

 それを受けて、大倉泰裕千葉県立松戸向陽高校教諭より、基本的に賛同のコメントが述べられ、経済学や法学といった縦割りの切り分けではなく、経済、法、政治、倫理などすべてを関連付けて初めて、この世の中、社会が理解できて、社会を読み解く力がつくものであることが強調された。

 次に第2部のパネルディスカッション「法教育と経済教育の対話その3」では、まずコーディネーターである中川雅之日本大学教授から、過去2回のシンポジウムの概要と結論のレビューがあり、その上で各パネリストがそれぞれの立場から法と経済の教え方の実践例を中心にプレゼンがあった。

 まず、日弁連の弁護士である野坂佳生金沢大学法科大学院教授は、法原理教育の社会科的な意味を説明した後に、具体的に中学の社会科の授業において「環境税の負担」に関する効率と公正を解説するためのゲストティーチャーの役割を果したことの説明があった。

 また、藤井剛千葉県立千葉工業高校教諭は、高校での法と経済の教え方について、法教育も経済教育も、社会科教育の一環という意味では目的は同じであることを強調。その上で、現行の法教育のあり方について、以前のシンポジウムでも指摘があった条文などの「丸暗記」への疑問を提示するとともに、今回提案されたような教科書や教材が法教育の側でも必要であることを指摘し、その点で両分野の提携を呼びかけた。

 さらに、兼間昌智札幌市立定山渓中学教頭は、中学で法教育と経済教育をどう教えるかについて、一方において一部で思った以上に経済的な見方を生かした授業や試験問題が見られるようになってきたが、他方では依然として教師が経済や経済学を十分に学んでおらず、またその機会もないため、新しい動きが経済教育にも法教育にも生かされていない点を強調した。最後にパネリスト全員が共通に指摘した問題点として、法教育における制度や条文を暗記する傾向と、経済の専門の側から教育現場への働きかけやサービスの提供の不足・欠如があった。

 その後の質疑応答では、実践型の授業における効果や評価のあり方の問題、さらに法と経済の見方に加えて教育学、教育実践の分野との交流の進め方などについての議論があり、最後はシンポジウム全体をまとめて問題点や今後の課題も再確認した中川教授の総括、および西村理同志社大学教授による挨拶があって、無事閉会となった。

 今回のシンポジウムの評価については、いうまでもなくそれぞれの立場で異なると思われるが、総じて今回は前2回に比べると、法教育と経済教育の間の理解が進み、距離が縮まった感があり、明らかに前進が見られたといえる。それでも現実の教育現場では、まだ大きな隔たりのあることは確かなので、今後両分野のさらなる相互理解と相互協力が必要ではないかと感じさせた。その意味で、次の第4段への期待が高まった今回のシンポジウムであった。

(文責:宮尾尊弘筑波大学名誉教授)