執筆者 新井明

 山形大学で開催された社会科教育学会で発表した内容の一部を紹介します。 入試問題プロジェクトを結論として、入試問題を改善するには大学側に要求する だけでなく現場でできることをやってゆくという提案をしました。そのひとつが この入試問題を逆手にとるというものです。入試問題のリード文には、よく練られて メッセージ性が高いものが結構あります。 ところが生徒も教える教員も残念ながらリード文にそれほどの価値を置いていません。 極端な場合は、リード文は読まなくてよいという指導を行うこともあります。 それではもったいないし、入試問題を改良するためにも、リード文を逆手にとって そこから授業を構想することもできるはずだし、それをやってゆこうというものです。

 例をあげます。2013 年の大学入試センター試験の第4問のリード文です。 市場メカニズム、市場の失敗を取り上げた最後の段落で次のように言います。 「このように、正と負の両面を踏まえると、市場取引を支えるルールのもたらす 光と影とを認識し、日本経済、さらには世界経済の発展を考えていかなければなら ない。」というものです。

 すばらしい文章です。設問は、日本経済の下にアンダーラインを引き、戦後日本経済に 関する知識問題が出されているだけです。でも、市場取引を支えるルールの光と影 とは何か、また、それを踏まえると日本経済、さらには世界経済を発展させるには 何が必要なのかに関しては言いっぱなしで、何も問われていません。生徒に 200 字でも、 400 字でも論述をさせることで、知識を踏まえてそこから何を考えるべきなのか、 を生徒が自らつかむ可能性がでてくると思うのです。この最後の問いに答えるために、 それまでの設問があるという位置づけがはっきりするし、本当にその知識が必要なのだ という吟味、洗い直しもできるはずです。

 言語活動の充実がいわれていますが、こんな足元に貴重な素材が埋まっている とするとそれを活用しない手はないのでは、というのが今回のヒントです。

(メルマガ 58号から転載)

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