執筆者 新井明

 新聞に関してはこのコーナで何回か取り上げています。今回のヒントも新聞関連です。それはちらしです。

 ちらしは新聞に挟み込まれて毎日配付されますが、ここに経済を読み解く素材が一杯詰まっています。ちらしの効用はたくさんありますが、以下の三点が経済の授業に役立つはずです。

 一つは、身近な価格の変動を知ることができることです。それにはスーパーのチラシが一番です。目玉の商品の価格がどうなっているか、その産地はどこか、そして今はやりの商品は何かなどを即知ることができます。もし、野菜が高ければ新聞の商品面や社会面の記事に注目すればその背景も分かるはずです。先日1億円を超える価格が付いて話題になったマグロの卸値なども、新聞記事とちらしを連動して調べさせるとしっかりその理由がわかります。家電量販店やPCショップののちらしでは、寡占や独占的競争の生々しい実態もうかびあがります。自動車や住宅のちらしからは税制や補助金の動きも読むことができます。

 二つ目は、日本の社会の動きがわかります。それにはアルバイトや求人のちらしがいいでしょう。例えば、この正月にはいった求人ちらしでは、老人病院や介護施設の新設オープンに伴う求人が目立ちました。それだけ需要があり、新規の供給も増えていることがここからわかります。その際、給与などもしっかりチェックしておくとよいでしょう。また、サービス業ではどんな職種がちらし求人をしているかもあわせてみておくと、日本の産業構造の変化もしっかり理解できます。

 三点目は、内容ではなく形式です。つまり、こんなに簡便な紙ベースのデータはないということです。毎日のものであり、惜し気がないということは教材としての利便性からいってなかなかのものです。ただし、最近は新聞を読まない家庭も増えています。その場合は、先に取り上げたスーパーや家電量販店などはネットでもちらしを見ることができます。

 ちなみに、我が連れ合いは新聞の本体よりちらしの方の熱心な読者です。そのリアリズムは教室で教える私をはるかにしのぎます。その力の源泉はちらしを精読するところにありとみています。

(メルマガ 48号から転載)

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