執筆者 新井明

先日、札幌のワークショップで実践を発表された、奥田修一郎先生の「回転寿司」ネタがそれです。回転寿司はどこにでもありますが、奥田先生の学校の地元には「くら寿司」の本店(発祥の地)があるのだそうです。そこに突撃取材をして、回転寿司の成功の秘密や競争の実際を素材にして生徒にぶつけるという授業を実践中とのことでした。生徒は、地元にあるお店が、全国展開中の企業であることと、回転寿司という身近な事例であることもあり、興味をもって授業にのぞんでいるとのことです。

 このような地元ネタ、地理や歴史の授業では結構あるのですが、経済の授業ではそれほど開発されているとは言いがたい現状でしょう。例えば、愛知のトヨタ、茨城の日立など企業城下町では企業の動向がそのまま地域経済に影響をもっていて、すぐ教材になりそうです。でも、今回の東日本大震災で明らかになったように、見えないところにも重要企業が地元にあるケースが探せば結構あるのではと思います。

 先生方も、広く世界を見るとともに、足元を掘ってみると、すごい宝が掘り出されるかもしれません。

 ちなみに、私が住んでいる武蔵野地区では、旧中島飛行機が地元ネタになります。この会社、戦前はゼロ戦や隼を作っていた軍事産業ですが、戦後はその技術者がプリンス自動車(現在の日産)、富士重工とわかれて日本の自動車産業をになっていった歴史があります。だから、歴史ネタでもあるのですが、中島知久平という創業者のアントレプレナー精神やその後の一族の悲劇、戦後の日本の製造業をささえた人脈など、現在に通じるネタが沢山あります。三鷹にある国際基督教大学(ICU)の本館は、戦中に建てられた中島の研究所の建物を今でも使っているだとか、地元ネタは豊富です。

(メルマガ 30号から転載)

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