執筆者 新井明

  国際経済分野、特に南北問題での定番教材に「貿易ゲーム」があります。イギリスの開発教育のなかで開発されたゲーム教材です。日本でも、マニュアルが翻訳されていて、学校だけでなく社会教育などでも活用されています。

 「貿易ゲーム」はハンディをもった国(チームが)定められた製品を作るときにどんな取引ができるか、また、初期のハンディをどう克服できるか、もしくはできないかを実感させるゲームです。多くは、南北の格差で南の国の大変さ、くやしさを実感したという感想が得られることが多い教材です。

 ところが、国際経済の授業を終えた時点で、総括的にやらせると従来よくでてくる感想とは違う結果が得られることがあります。比較優位や経済発展の条件をしっかり学ばせておくと、ハンディを負った途上国でも、自分たちのメリットは何か(例えば人口の多さなど)を見つけて、しっかり交渉して、うかうかしている中進国を抜いてゆく国も出てきます。もちろん、ハンディを超えられず呆然として、悔し涙にくれるチームが多いのですが、知恵の使い方が大事と感想に書く生徒が結構でてきます。

 南北問題、モノカルチュア、先進国の責任というある種の定型的パターンをもって授業をしているのは、ひょっとして私たち授業者であり、生徒はもっと柔軟なのかもしれません。

 ちなみに、振り返りも含めると2時間以上が必要とされているこのゲーム、私は45分でやってしまいます。振り返りは200字作文で書かせて後で総括します。ポイントは、一通りの講義の後にやらせることです。

(メルマガ 26号から転載)

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