こちらのサイトから読めます。
①どんな本か
・これは先月紹介した、齊藤誠先生の『教養としてのグローバル経済』(有斐閣)のなかに「高校生でも読める参考文献を」という編集者の要求に応えるものとして、齊藤先生があげた一冊です。
・Core Projectは、欧米といっても、主に欧州の経済学者(フランス、ドイツ、イギリスなど)が参加して、新しい経済教育を目指してテキストの編集やオンラインで高校から大学院レベルまでの教育行っています。
・齊藤先生が推薦するのは、フリーで公開されている学部入門レベルの経済学のテキストです。ほかに、コロナ関連のデータや分析のコーナーもあります。
②どんな内容か
・全体は22章からなっています。目次を紹介しておきます。
1—資本主義革命 2-テクノロジー、人口、および成長 3-希少性、仕事、選択
4-社会的相互作用 5-財産と権力:相互利益と対立
6-会社:所有者、管理者、および従業員 7-会社とその顧客
8-需要と供給:価格決定と競争の激しい市場 9-労働市場:賃金、利益、失業
10-銀行、お金、およびクレジット市場
11-レントシーキング、価格設定、および市場のダイナミクス
12-市場、効率、および公共政策 13-経済変動と失業 14-失業と財政政策
15-インフレ、失業、金融政策 16-長期的な技術の進歩、雇用、生活水準
17—キャップストーン:大恐慌、黄金時代、そして世界的な金融危機
18—キャップストーン:国と世界経済
19-キャップストーン:経済的不平等
20-キャップストーン:環境の経済学
21-キャップストーン:イノベーション、情報、ネットワーク経済
22-キャップストーン:経済学、政治学、および公共政策
・基本的な内容はいわゆる主流派経済学のものと同一ですが、特徴として、具体的事例を取り入れて、課題解決的な書き方をしていることがわかります。それが17からのキャップストーン(総仕上げの探究学習)のところで大きく出ています。
③どんなところが役立つか
・アメリカではCEEが経済教育のスタンダードを提供して、大きな影響力をもっていますが、それとはことなる欧州型の経済教育の内容を知ることができます。サブタイトルが「世界を変えるための経済学」となっていることに象徴されるように、課題解決型の学習志向を持ったテキストです。
・アメリカのマンキューやクルーグマンなどのテキストと比較しながら、読む(眺める)と同じ資本主義国でも、肌合いがかなり違うことが実感できるはずです。ここから、日本の私たちが得られる教育的な課題は何かを考えることができると思われます。
・各セクションの最後にある、質問に答えてみて、自分の経済知識や問題意識を見直すこともよいかもしれません。
④感想
・むかしイギリスの高校生向けの経済学のテキストを入手したことがあり、地理的要素や環境問題などをいち早くとりいれていたのが印象的でした。
・このテキストでも、その特徴が良く出ているのではと感じます。
・Core Projectはアメリカにも進出しはじめて、アメリカの経済教育を改革しようとしています。はたして、どこまでそれが可能になるか、興味深いところです。
・夏休みに英文で挑戦するも良し、翻訳で読むのも良しです。Google翻訳でもそれなりの内容はつかめるようになってきています。そんな技術進歩の実例として、PCで読むのが良いかもしれません。ちなみに、紹介した目次は、Google翻訳の引用です。
(経済教育ネットワーク 新井 明)
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