■行壽 浩司 (福井県美浜町立美浜中学校)
①佐藤雅彦他 『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』(マガジンハウス)
行動経済学を漫画で学べる一冊。中学生の朝読書の時間によく借りられて読まれています。大人が読んでも「なるほど!」と思えるような内容となっており、身近な事例から行動経済学が学べます。本書で取り上げられている菊池寛の「形」の事例などは国語の教材にもなっており、それを行動経済学の視点から解釈し直しています。

②マイケル・サンデル 『それをお金で買いますか』(早川書房)
「ハーバード白熱教室」で有名なマイケル・サンデルの一冊。「ハーバード白熱教室」同様に、身近な事例を用いながら、行き過ぎた市場主義がもたらす弊害について考えるきっかけを与えてくれます。授業の合間に考える時間を設定する際に使える「ネタ」が多い。

③アマンダ・リプリー 『世界教育戦争』(中央公論新社)
PISAの調査結果を皮切りに、思考力のスコアが高い国の学校教育、低い国の学校教育を調査、記述している一冊。内容も生徒たちの学校教育の様子をナラティブ(物語的)に語っており、次々と読み進めることができます。福井県の初任者研修の必読文献となっています。詰め込み教育の是非などについて考えるきっかけとなり、このような本をもっと読んでみたい、と感じた一冊。

■下村 和平 (京都府立山城高等学校)
①林 敏彦 『需要と供給の世界』(改訂版)(日本評論社)
価格機構を教える際のネタに私はこの本をよく使っています。例えば、「空気はなぜタダなのか?」「旅行会社はなぜ月旅行を商品として販売しないのか」「混雑税」など。以前の共通一次の過去問に対する林先生のコメントも興味深い。ミクロに関する単元を政経で話すのに参考になる名著だと思います。

②西村 理 『経済学入門』(放送大学教育振興会)
経済教育ネットワークでお世話になっている西村先生が書かれた本。本書は先生が「まえがき」に述べられているように、「経済学のエッセンスをやさしく伝えるように具体的なたとえ話を用いて」書かれています。勿論難しい部分もありますが、手元に置いておきたい一冊です。

③佐伯啓思 『現代文明論講義』(ちくま新書)
佐伯啓思氏による京大での講義をベースにした本。かつて「ハーバード白熱教室」というNHK番組があったが、佐伯氏は、その京大版をやろうとしたようです。様々な学部、1年生対象の90分講義。テーマは現代の世界、とりわけ日本を覆う「ニヒリズム」。時事問題を題材にして学生と教員とが討論する。高校生にはやや高度な内容だが、「探究」の授業の参考になろう。こんな授業ができれば、答をすぐに求めがちな生徒に「考えるトレーニング」になると思う。

■大塚 雅之(大阪府立三国高等学校)
①浦部はいむ 『高校生を、もう一度』(イースト・プレス)
定時制高校を舞台としたマンガです。作者は大阪の定時制高校出身者であり、経験者にしか描けないストーリーばかりです。子どもに中卒であることを批判された母親が学びなおしを決めて通学するストーリーなど泣ける要素も多くあります。どんな困難な状況に置かれた人にとっても、学校は学びを提供するところであり続けるべきと思わせてくれる作品です。

②NHKスペシャル取材班 『やばいデジタル』(講談社現代新書) 
昨年のNHKスペシャル「デジタルVSリアル」のうち第1回「フェイクに奪われる私」第2回「さよならプライバシー」をまとめたものです。私たちの検索履歴などの個人情報はわずか2.7GBであり、それらの個人情報を分析すればどんな人物かといった内容だけでなく、将来どのような行動をとるかまで当てられてしまうとというショッキングな内容がたくさん含まれています。改めて、利便性と民主主義・プライバシーの保護の両立は難しいのだなと思わせてくれる本です。

③木庭 顕 『誰のために法は生まれた』(朝日出版社)
最近、後輩の先生に紹介してもらって読んだ本です。元東大教授の著者が高校生相手に「近松物語」などの古典を鑑賞させた後に法は誰のためにあるかを考えさせるものです。高校生相手の対話形式で読みやすいけれど、内容自体は難しい。「法とはグルになった集団を解体して、追い詰められたたった一人を守るもの」「見捨てられた一人のためにのみ、連帯(政治・デモクラシー)は成り立つ」といった記述が印象的です。

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