①どんな本か
元日本経済新聞の記者が書いた経済学の本、というより経済学説史の本です。
現代の経済学者、エコノミストがどのような立場で論じているかが分かるととともに、古典派経済学から現代経済学までの内容が分かりやすく紹介されています。
②本の内容は
全体は7章構成です。
第Ⅰ章と第Ⅱ章は、経済学者の類型、経済学とは何かのタイトルで、総論的な内容が記述されます。
第Ⅲ章から第Ⅵ章までは、ミクロ、マクロ、異端派、現代経済学など経済学の様々な潮流、学派が何と17も紹介されています。
最後の第Ⅶ章で、経済学との付き合い方を再論しています。
③どこが役立つか
授業で直接役立つ箇所は少ないでしょうが、第Ⅰ章と第Ⅱ章の、経済学者とエコノミストとの違いや、経済学批判の類型やそれにたいする主流派の経済学者の考え方が紹介されている箇所は、今の中高の教科書がどのような立場で書かれているかを知る意味で参考になるでしょう。
経済学の内容に関して知りたい先生には第Ⅲ章からの部分を通読することで、現代経済学までの足取りがわかります。ただし、この種の知識は下手をすると一知半解になるので、こんなものだという程度にしておいた方が良いかも知れません。
④感想
著者は元日経の記者だけあって、数式を一切使わないで文章だけ、それも大事な箇所には傍線が引かれているという構成なので、読みやすさと言う意味では抜群です。
ただし、正確さを期して淡々と書かれているので、バルファキスの本のような疾走感、爽快感はありません。悪く言うと、いや良く言うと、優等生の読書ノートとという本かもしれません。
ちなみに、著者前田さんは、岩井克人さんの『経済学の宇宙』(日本経済新聞出版社)のインタビューアーとして同書をまとめた人です。
(経済教育ネットワーク 新井 明)
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