■水越康介『応援消費-社会を動かす力』(岩波新書)

①どんな本か
マーケティングの研究者が、東日本大震災やコロナ禍などをきっかけとして盛り上がってきた「応援消費」を切り口に、現代の消費動向、それと市場経済との関わりを書いた本です。
寄付と消費、ボランティアと応援消費、ふるさと納税を巡る寄付と消費、バイコットなど、消費と経済全体の流れを考える上で参考になる事例が多く紹介されています。


②本の内容は
全体は7章構成です。
 第1章で応援消費の定義とその言葉がいつから登場したのかが紹介されます。
 第2章で寄付とボランティアの違い、応援消費との関連がまとめられます。
 第3章はふるさと納税を巡る問題が扱われます。
 第4章では世界における応援消費の紹介で、バイコット(ボイコットの反対で購入することで応援する運動です)の紹介です。
 第5章、第6章では、著者の専門のマーケティングから応援消費を分析します。
 終章で、それまでの事例や分析を総括します。


③どこが役に立つか
マーケティングという言葉は社会科や公民では登場しない経営学の言葉ですが、中学で言えば「消費者と経済」の箇所、高校で言えば消費者の権利と責任(法、契約の箇所)での学習にリンクすることができる内容です。
第1章の応援消費という言葉の登場を新聞の検索機能で調査する箇所は、探究活動の事例として使えるところでしょう。
第3章のふるさと納税の箇所は、返礼品競争の在り方、地方財政の問題など、論争型の授業や調べ学習など、幅広く授業で扱うヒントになるしょう。


④感想
あらためて応援消費と言われなくても、生協の品物やフェアトレードの商品、特定の産地やメーカーの品物を選んで買うことも多く、日常結構それに近い消費行動をしているなというのが紹介者の感想です。
「寄付もボランティアも、そして応援消費もまた、決して純粋な贈与たることは出来ず、交換化され、市場化される可能性を伴ってしか実現できない」(p180)という著者の言葉は、少々難しいけれど考えさせられる言葉でした。
教科書にでてくる自立した消費者からアクティブな消費者への展望が見えるコンパクトな本だと思いました。

(経済教育ネットワーク 新井 明)