小島庸平『サラ金の歴史』中公新書

①どんな本か
・サラ金と呼ばれる消費者金融の歴史を扱った本です。
・学校では消費者被害にあわないように、多重債務に陥らないようにというマイナスイメージで扱われる消費者金融の一世紀の歴史を創業者、家計の動向、ジェンダーの視点などから捉えた本です。

②本の内容は
・序章と終章と本文は6章に分かれています。
 序章では、家計とジェンダーから見た金融史という新しい視点が提示されます。
 第1章は、戦前期を扱います。
 第2章は、1950年代~60年代を扱います。
 第3章は、サラリーマン金融の登場です。ここでは「前向き」の資金需要という捉え方で高度成長期の消費者金融の需要と供給の有様を描きます。
 第4章は、低成長期にはいっての「後ろ向き」の資金需要を取り上げます。
 第5章は、サラ金で借りる人・働く人のタイトルで多重債務者、それを取り立てる従業員に光をあてます。
 第6章は、2010年代から現在までの状況が説明されます。
 終章は、これまでの総括です。

③どこが役立つか
・授業では、第5章と第6章が役立つ箇所だろうと思います。
・第5章では、なぜ人はサラ金でお金を借りるのか、多重債務者と自殺や家庭崩壊の事例が登場します。また、借金を取り立てる側のテクニック、労務管理方法なども扱われています。行動経済学で言うスラッジの方法、感情労働に従事する従業員の心理なども紹介されています。
・第6章では、サラ金企業が現在は大手の金融グループに組み入れられていること、上限金利の制限を巡る論争、家計における管理者の変化が消費者金融の需要側に起きていることなど現在の問題が取り上げられています。これらの章はパーソナルファイナンスを扱う授業で参考になると思われます。

④感想
・春の経済教室の準備のために金融に関する本を探している時に見つけた本です。新刊ではありませんが、「サントリー学芸賞」受賞ということで注目しました。期待に違わず、面白い本でした。
・サラ金の創業者の強烈な個性、金融技術の革新をいち早く取り入れる先進性、人間の心理、弱さを付く取り立て技術や労務管理方法など改めて確認しました。
・上限金利を巡る論争は、最低賃金の論争などと同じで、標準経済学での知見が正しいのか、そうでないかの試金石だと感じます。同じように、需要があるから供給があるのか、供給があるから需要が喚起されるのかという古典的命題を巡る論議とも通じるものがここにはあると感じます。
・腰巻きのダークサイドか、セーフティネットかという言葉は、両義性があるから存在するのだろうと思います。また、教科書の記述の裏に、『ナニワ金融道』や『闇金ウシジマ君』の世界があることを授業者は知っておく必要ありとも感じました。

(経済教育ネットワーク 新井 明)