①どんな本か
・近代日本の主な戦争を、財政、金融の資金面から分析した研究書です。


②どんな内容か
・扱っているのは、戊辰戦争、西南戦争、日清戦争、日露戦争、第1次世界大戦・シベリア出兵、日華事変・太平洋戦争、戦費借入の戦後処理です。
・それぞれ、どう戦費を調達したのか、予算はどう組んだのか、不足の時にはどうしたか、戦費の処理はどうなったかが扱われています。

③どんなところが役立つか
・戦争は政治史のなかで扱われ、戦費問題は、なかなか登場しませんが、お金がなければ戦争はできないという事実を生徒に紹介する際に、具体的な例をあげることができるという意味では参考になります。
・専門書なので、直接授業に役立つというより、拾い読みをして、関心のある箇所や使えるエピソードを探してみるとよいでしょう。


④感想
・個人的には、日清戦争の戦費問題にこだわりがあったので、少々お高い専門書でしたが購入しました。
・結果として、一般会計では酒造税は10%を占めているだけで、酒税で戦費がまかなえたという言説は間違いであることがわかりました。また、別会計の臨時の戦費調達には軍事債が発行され、公募もあるけれど、日銀が引き受けたり、預金部が全額ひきうけて調達したりしたことも同書でわかりました。
・事実を確かめるのは大変だというのが感想です。
・終章の戦費調達の終焉の箇所での、太平洋戦争の国債償却は、戦後インフレでチャラになったというところを読んで、今の政府の債務は将来のインフレでチャラになるのだろうかと考えてしまいました。
・満州事変が扱われていないので、満州事変の戦費はどこからどう出たのかが気になりました。満州事変を扱っていない理由が書かれていないのも不思議でした。
・日華事変と太平洋戦争という用語がセットになっている点も気になったところです。日華事変という言葉をつかうなら、大東亜戦争、太平洋戦争なら日中戦争じゃないのかとちょっと突っ込みたくなります。若手の研究者なるがゆえの、歴史認識のバイアスでしょうか。

(経済教育ネットワーク  新井 明)

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