リアペのすすめ

執筆者 新井明

(1)リアペってなんだ
 リアペとは、リアクション・ペーパーの略です。コミペ、コミュニケーション・ペーパーとも呼ぶこともあります。
 これは、授業の後に感想やその授業で分かったこと、疑問などを書く用紙です。大学では出欠調査もあわせて、この方式で講義を行なっている先生方が増えています。
 このリアペ、学生の反応を知るだけでなく、そこから、講義の内容を修正したり、発展させたりすることができる、なかなかの優れものです。
 中高の先生方でも、授業後に生徒の感想を書かせて、その反応をもとに次の授業を組み立ててゆくというスタイルをとっている先生もいます。それもリアペ方式と言えるでしょう。
 ネットワークメンバーでは、杉田孝之先生(千葉県立津田沼高校)が、生徒の問いから授業を深めてゆく実践を続けています。杉田先生のリアペは「授業でわかったこと、分からなかったこと、疑問に思ったこと」を自由に書かせて、次の時間に提出させるやり方だそうです。

(2)大学での一例
 筆者の大学での講義では、授業終わりの10分をリアペ記入タイムにしています。その時は、それぞれの回のテーマに関するお題を出し、感想や意見を書かせる方式です。
実際には、講義内容が多く、押せ押せなので最後の5分程度しか書く時間がなく、学生さんからはもっと書く時間をよこせとの要望もでます。
 提出されたリアペは、まずざっと読み、面白そうなものをチェックし、さらに、それらを精読して、次の回の授業に何人かをピックアップして紹介します。
授業の冒頭に、それらの意見の検討を行ない、場合によっては、書いた人間からさらに意見を聞くという形で深めることもあります。(だから押せ押せになってしまうのですが)
そんななかから、出てきたのが「教育系の学生はなぜ経済がきらいか」(教育学科の学生が、経済は競争で弱者排除の面が強く、教育の生徒を切り捨てないという方向から見て好きになれないという意見に対して、経済学部の学生がそれは違うのではと反論した)という論争です。
 学生の最終レポートの感想や、最後の回のリアペには、毎回どんな意見がでてくるか興味深かった、自分とは違う学科の学生の発想が興味深かったなどが出てきます。また、自分の文章が載ったことはうれしかったと素直な感想もありました。
 講義をすすめてゆくなかで、だんだん学生の書く内容が深まるのを見ることができるのも、この方式ならではのメリットでしょう。

(3)中高でリアペは可能か
 大学でのリアペ方式は、確実に大学授業の質を変えてゆく可能性があります。中高では、日常的に生徒とのコミュニケーションがありますが(クラス日誌、学級通信など)、教科内容に関するコミュニケーションは、かつては「授業ノート」スタイルを取る先生が結構いたのですが、今はあまり聞かなくなっているので、それほど多くないかもしれません。
 大学は一コマ90分ですから、リアペスタイルが可能になりますが、50分授業で毎回ということはできないのは当たり前ですから、大きな単元ごとに生徒のリアペを書かせるのがよいかもしれません。
 その時、使えるのは200字作文用紙です。200字ならそれほど心理的抵抗なく、感想は書けますし、読むこともそれほど大変ではないでしょう。
 なにより、生徒のリアペを何らかの方法でフィードバックすることができれば、それは大成功です。
 観点別評価に振り回されるよりも、生徒と授業を巡って内容的なコミュニケーションを取ることが、生徒もそうですが教師の授業づくりへのインセンティブを与える一番の刺激になるのではと思われます。

(4)テストもリアペだ
 リアペに関して広げると、テストも生徒との対話になります。だから、センター試験のようなマーク式は、採点者は楽ですが、生徒の顔が見えません。
 全てを記述式ということも現実的ではありませんが、テストを通して、自分の授業がどう受け止められているのかを確認する。それをもとに出来た、出来ないではなく、何が足りなかったのか、何を補充したら良いのかを考える。そんなテストは、リアペそのものでしょう。
 ちなみに、大学でのリアペ方式、非常勤の一コマを担当するだけだからできるのだということも付記しておきます。大教室での多人数の講義で、多くのコマ数を担当しなければならない専任の先生方にすべてそれができるとは思いません。できるところからやれば良いんです。

(メルマガ 121号から転載)