執筆者 新井明

 新学期に入り、新しい授業がはじまります。中学校公民だと歴史がまだ残っていますから、新学期だからといって大きな変化は少ないかもしれません。高校では、新しい生徒、新しい教科書とすべてがシャッフルされた状態で始まります。
 そこで重要なのは、最初の一時間目です。
 生徒の立場からすれば、この教科は何をやるんだろうか、この先生はどんな先生なのか興味深々のはずです。
 その生徒の興味に応えるためにも、初っ端のインパクトを与えることが大事になります。この頃はあまり聞かなくなっている「授業開き」です。そこで生徒をつかめば、一年間興味を引き付けることもできます。

 この初っ端におすすめは、先生方のおはこの持ちネタをぶつけることです。自己紹介を延々としたり、教科書を淡々と始めるのは避けたいところです。
 持ちネタは、簡単なクイズ、ゲーム、パフォーマンスなど先生の得意技を披露するのがよいかと思います。最初から怒るのも一興かもしれません。こいつはヤバイと思わせるのも逆の意味でインパクトはあります。
 クイズやゲームをやったら答えをださないで、「おあとは授業で」とやる手もあります。ひっぱるやり方ですね。

 例えば、囚人のディレンマのじゃんけんゲームをいきなりやらせて、そこから政治でも経済でもはじめるのもいいかもしれません。倫理や現代社会では、自画像を描かせて自分を何に例えるかというお題をだして回収するという手もあります。その時に、簡単な心理テストだよと言うとよいでしょう。答えをださなければ、生徒はいったいなんだったんだろうという疑問がのこり、当該の場所では、あの時のあれだったんだという発見に通じる可能性がでてきます。自画像では生徒の意外な一面が分かって、生徒理解にも通じます。

 この種のやり方のマイナスは二つ。ひとつは限界効用が逓減してしまうことです。最初は面白かったけれど、だんだんつまらなくなって生徒はそっぽを向いてしまうことも計算しておいてください。
 もう一つは、三学期になって生徒がこちらの意図をわかってのってくるという収穫逓増型の授業を目指す場合です。この場合は一人張り切って授業をやると空回り感が残ります。
 いずれにしても、「終わりよければ…」で、長丁場を乗り切る戦略を先生方それぞれのタイプに合わせて取り組まれるとよいと思います。なお、今回のテーマは千葉の杉田孝之先生との対話をヒントさせていただきました。

(メルマガ 87号から転載)

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