執筆者 新井明
ここでいうエッセイは、日本流の感想文ではありません。小論文のことです。いきなりフランスのバカロレア流のエッセイを書くことは無理ですから、さしあたりは小論文です。ちなみにバカロレアでは、半日かけて必修の哲学ではエッセイを書かせます。テーマは選択ですが、経済にちかいテーマでは「仕事は人間にとって必要な手段か」などというものが過去には出題されたことがあります。これを日本語で換算すると4,000字程度でまとめます。こうなると日本の高校生にとっては大論文になってしまいます。
それでも最後はこの程度のものが書けることを目標に順序ステップを踏んで訓練すれば可能になります。ポイントは、日本流の「起承転結」の四段構成ではなく、欧米流の三段構成の書き方を教えることです。三段構成は、序論-本論-結論の構成です。序論では、あるテーマに対して賛否を明確にします。本論でその論拠を書きます。その際に論拠を三つかくように指示することが大事です。三つであることにこだわる必要はないのですが、三つ論拠をあげるように頭を絞り出すことが、論理的に考える訓練になるとは経験的に言えます。最後の結論は、まとめで序論での結論を補強すればよいわけです。
この三段構成で文章を書くと、情緒はないけれど、社会科学系の命題に対してはかなり機械的にしっかりした文章がかけるようになります。日本の国語教育では、この種のライティング教育をしませんから、社会科の私たちが意図的に指導しないと、情緒的な作文を大学生でも書くことになりかねません。
生徒はこの種のエッセイを書くことに慣れていませんから、まずは賛成反対を明確にさせ、その論拠をあげる短い文章(200字程度)を課し、その次に字数制限なしで、三段構成の文章を書かせ、最後に600字から1200字程度のエッセイを書かせるというこれも三段方式で指導してゆくとよいと思います。この方式で書かせると、テストなどでの採点は意外と簡単です。例えば、「消費税10%値上げ法案について」というテーマで書かせた場合を想定してみます。20点配当にした場合、賛否が明確に書かれて三つの根拠がでていればそれぞれ5点で15点分、残りは言葉の使い方や構成のに関する分で5点としておけば、生徒の書いたものを短時間で採点することができます。短時間に書かせるのですから、事前に予告しておくことも必要かもしれません。いずれにしても、書くことによって、学んだことを確認する。直前に暗記して、テストが終わると忘れるというパターンを打破する可能性があるこの方式、一度試みてみませんか。
(メルマガ 40号から転載)
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