執筆者 新井明
3月11日の東北関東大震災は、未曾有の被害を被災地域に与えるだけでなく、まだ収束しない原発事故など、発生から三週間になろうとする現在でも、その被害や今後の推移などが予測がつかないものになっています。経済教育にも当然大きな影響を与えることは確実だと思います。以下の紹介は、地震で授業ができなくなった新井が、受講生徒に配布したプリントの一部です。こんな解説をしたのだという参考にしていただければと思います。なお配布日は3月23日でした。
地震と原発事故を巡って…経済の観点から
① 東北関東大震災を巡って
ⅰ)想定外の規模…ただしその想定が甘かったかもしれない
ⅱ)経済史的に地震を考察すると
関東大震災…復興のための資金提供(震災手形)、その焦げ付き、金融恐慌、ファシズムへ
阪神大震災…大きな打撃だったが回復、97年不況、不良債権問題の引き金の一つ、長期デフレの遠因
今回…大規模な補正予算、財源不足、赤字国債発行、消化できるか否かが問題(長期利子率に注目)、日本の地力が試されている
ⅲ)買占め・電力不足に関して…需要と供給の世界が今出現している
供給が減り、需要が一時的に増えると必ず品不足は起こる
→時間が解決、供給が回復し、需要が落ち着くまでが勝負
電力会社…公益企業だが民間会社
供給の割り当ては政府(強力な権限)しかできない
一時的国家管理会社になるなど経営形態は変化の可能性
ⅳ)ボランティアなど…外部経済の世界
体制が整わないときのボランティアは「善魔」になりかねない
絶対に必要…迷惑をかけずに自分の判断でやる「比較優位」
例:阪神のとき、バイクで化粧品などを持参した田中康夫
花をいっぱい持っていった作家・精神科医加賀乙彦
ⅴ)外国為替市場の動き
何で今円高なの? …美人投票の理論そのもの
実需はあるが、ほとんどは投機マネーの動き
日本の企業が円を持つはず、海外への投資も減る→ドル売り円買いと市場関係者のほとんどが予想した
長期的には、経済の弱い国の通貨は売られる→円安になる
市場を閉じたほうがよい? …バロメーター機能から開くべき
世界がどう日本を見ているかがここから伺える
②原発事故を巡って…甚大な外部不経済が発生
予測されていた最悪の事態…広瀬隆『原子炉時限爆弾』(ダイヤモンド社)2010年10月発行など、福島は危ないとの警告
企業や推進者の責任、それを阻止修正できなかった市民の弱さ
今後は冷静に自分の判断で行動することが期待される(日頃の訓練)
(メルマガ 27号から転載)
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