執筆者 新井明

 昨年末の日本経済新聞の「やさしい経済学」に興味深い話が掲載されていました。名古屋市立大学の横山和輝准教授の「金融教育の歴史に学ぶ」という連載の最終回(12月20日掲載)の解説です。

 解説では、金融システムの進化には、制度的な整備だけでなく、金融契約の当事者の認識能力を高める必要がある述べられています。その傍証として、昔の「算術」教育の例が取り上げられていました。

 1902年刊行の高等小学校2年生用の教科書の問題です。高等小学校2年は、現在の中学2年に相当します。問題は、「1株の時価20.2円の株を100株売り、その代にて1株80円の株を買えば、幾株買いうるか?」「軍事公債の利子毎回10円ずつ入る人の所有額面高如何」というような問題が載っているとのことです。現代の中学生はこの問題を解けるでしょうか。それより、「算術」の教科書にこの種の金融リテラシーを高めるような問題が載っていること事態がびっくりです。

 入試プロジェクトをまとめている中で、旧制中学の入試問題を集めた本を参照したことがありましたが、旧制中学や女学校の入試にも同じような金利計算の問題が出題されていました。金融教育という点では、昔の方が盛んで、大事なことを教えていたことが解ります。横山准教授は、このような金融教育を受けてきた世代が、戦後の復興や高度成長のリーダーとなっていったと指摘しています。教育は100年の計。私たちの責任も重大です。

(メルマガ 24号から転載)

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