①どんな本か
・『ゲーム理論の入門の入門』岩波新書、を書いた著者が、ゲーム理論家が扱うであろう重要なトピックを、まずは大ざっぱに理解したい、思想のセンスを身につけたいと思っている向けの本というのが著者のメッセージです。
・物語は、ねずみ一家がいろいろな家に出入りをしてゆくなかで、それぞれの家で起こる出来事を紹介してゆくという構成です。
・話題は次の6つ半です。
第1章 どうやって皆の意見をくみとるか(全会一致の話)
第2章 なぜ人は話し合うのか(合意形成のための話し合い)
第3章 相手がどうするのかを読む(値下げ競争)
第3.5章 ナップ・タイム(後ろ向き帰納法)
第4章 物事のバランスの決まり方(交通違反の取締)
第5章 沈黙が伝えることは(情報開示・情報伝達の話)
第6章 相手の行動をみて、考える(人の行動の原因、理由を読む)
・それぞれの章には、「バックステージ」としてゲーム理論の解説が書かれています。
②授業でつかえるところ
・それぞれのエピソードを抽出して考えさせても良いでしょう。特に、第2章や第3章は、合意形成や価格の学習の箇所で応用問題として考えさせる格好のテーマかと思います。
・第5章は、高校生二人が登場して、成績を親に見せるかどうかを考えるというストーリーなので、これもそっくりHRなどで使うこともできるかもしれません。
・ゲーム理論は「囚人のジレンマ」だけではもったいないという著者の主張を、物語をつかって「囚人のジレンマ」以外のゲーム理論の世界に誘う本といえるでしょう。
③感想
・腰巻きにある、神取道宏氏の「若き天才」という言葉に、引いてしまいました。身びいきは共倒れへの道かもしれないなどと思ってしまいました。
・この種の「やさしくわかる」というのは要注意で、同じような趣旨のストーリー本がいくつかでていますが、大抵うまくいっていません。わかる、もしくは興味を持つのは、ストーリー仕立てでやさしくしたからということではなく、本質をついたものなら、難しくとも食いつくのではというのが正直な感想です。
・もう一つ注文を出すとすると、これらの出来事が社会的な意思決定とどうつながるのか、もうすこし説明が欲しかったというところです。
(経済教育ネットワーク 新井 明)
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