内容の概略
・図説で一番使われているのは『国勢図会』だろうと思います。毎年改訂されて、教科の予算で必ずといっていいほど購入されているものです。
・今回紹介するのは、それとは違い、数年に一度改定される新書の図説です。第3版が2012年の刊行だったので、8年ぶりの改訂ということになります。
・全体は10章に分かれていて、各章が見開きで9つの図表と解説、最後の10節が半ページの総括という構成です。
・目次を紹介すると、
 1 世界経済の輪郭
 2 国際貿易
 3 国際金融
 4 多極化、地域統合と貿易摩擦
 5 指令経済と途上国の市場経済化
 6 デジタル・エコノミーの拡大・深化
 7 人口・食料・エネルギー・資源
 8 地球環境保全
 9 経済危機
10 世界経済の構造変化 となっています。
・目次でわかるように、国際経済を教える前に、現状を概観して世界経済の動向と問題点を頭のなかで整理するには大変都合のよい本となっています。
・出たての本なので、「中国発、新型コロナショックで世界経済はどうなるか」という腰巻きの文章のように、新しい事態も一端ですが取り上げられています。

授業で使えるところ
・二つの使い方ができそうです。
 一つは、教えるための参考書です。例えば、今回の改定で入った6章のデジタル・エコノミーに関してはコンパクトでありかつこの10年の大きな変化を捉えることができ、教材づくりの参考になります。
 もう一つは、図解や解説の書き方の参考にすることができます。図解に関しては、もし自分が活用するならどこが使えて、逆に使えないのかを確認するとよいでしょう。解説に関しては、700字から800字(1ページ44字×16行)で、あるテーマを書くことができるかを試してみるために使うとよいでしょう。これは自分に対するテストであると同時に、小論文を指導するときの参考にもなります。

感想
・この種の本は、鮮度がいのちです。すぐに使えなくなります。仕方ないところですが、それでも時代を超えた普遍的な部分は何かを考える手がかりになります。
・手許に第3版があれば、記述やデータを比較してこの10年の変貌を確認するという手もあります。
・ちなみに、姉妹書の『日本経済図説第4版』の刊行は2013年。もはや使えない本なのでおそらく改定中でしょう。これもどのように登場してくるか楽しみです。      (経済教育ネットワーク  新井 明)

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