①どんな本か?
ご存じ河原先生の「100万人が受けたい!」シリーズの第五弾になる最新シリーズの公民編です。
②どんな内容か?
広島のお好み焼きと中東平和の記事から授業が作れるという「はじめに」からはじまり、第1編として「探究と対話による公民学習」の授業デザインの方法論も含めた総論がおかれています。
それに続く第2編では、「探究と対話を生む公民授業モデル」が24本紹介されています。
授業モデルの内訳は、公民の導入にある現代社会関連が4本、政治分野が9本、経済分野が8本、国際分野が3本です。
経済分野では、交換、価格、インフレ・デフレ、公共財、最低賃金、社会保障、CSR、行動経済学が取上げられています。
そこでは、ネジの商社、マスクの値段、映画館、素朴理論、貧困、サバ缶、ナッジなどがあげられています。
法律分野で扱われる逸失利益も、機会費用と同じ考え方なので経済としてカウントしてもよいかもしれません。
③どこが役立つか?
どこでも役立つというのがここの答えになりそうです。
授業モデルは、ねらい、教材研究の切り口、クイズ、ペアワークや討論の展開プランで構成されているので、これをそのまま単元の学習のどこかに組み込んで一コマの授業が作れるでしょう。
また、授業モデルの事例(ネタ)をこちらの方がふさわしいと思う自分が集めたネタに組み替えて授業をつくるのもよしです。
さらに、この本で扱われている多くのネタをプールしておいて、自分の授業で使えそうな箇所で取上げるというのも、有効な使い方になりそうです。
第一部の、具体例から抽象、当事者性を持たせる、感情と理性のせめぎ合いから探究の授業を作るという授業作りの総論も、日々の授業を振り返るリトマス試験紙の役割をはたすでしょう。
④感想
これだけのネタをどう集めたか、それぞれネタの元が書かれているので、河原授業作りの秘密、ネタ探しの秘密が得られるなと思いました。新聞、雑誌、本、大学生の発言、町歩きでの発見、調査・フィールドワークと多彩ですが、常にアンテナを張って、使えるネタをキャッチしようとする情熱だろうと感じます。
その情熱の源泉は、生徒との格闘であり、この世界はこれでよいのかと思う正義感覚ではないでしょうか。それがよく出ているのが「はじめに」の部分かと思います。
注文としては、授業モデルの4の「振り返りと探究・対話のポイント」の箇所の濃淡が大きいので、2の「探究の切り口」と呼応させることで、それぞれのネタの理論的な背景や学問体系のなかでの位置づけなどが明確になってゆくのではと感じました。
(経済教育ネットワーク 新井 明)
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