①どんな本か
ゲーム理論の研究者である、カリフォルニア大バークレー校准教授の鎌田雄一郎さんがこども向けに書いたゲーム理論の入門書です。
メルマガ140号で紹介した、前著『16歳からのはじめてのゲーム理論』(ダイヤモンド社)の続編ともいうべき本です。
②どんな内容か
主人公の小学校6年生の男の子を中心に、その周辺で発生する事件やエピソードを読み物風にしてゲーム理論の基本的部分を紹介しています。
全体は5章構成です。
第1章は、本屋で万引き事件に巻き込まれた主人公が自白するか黙秘するかの選択を迫られるという話です。
第2章は、算数のテストを破る同級生を巡るお話から、「後ろ向き帰納法」を紹介しています。
第3章は、本屋が入っているビルの塗り替えの賛否をとる順番を巡る話から「展開型」を紹介してゆきます。
第4章は、書店員が恋をして告白するかどうかの話です。
第5章は、友人と待ち合わせの場所を巡るエピソードから、コミットメントとフォーカルポイントについて紹介します。
エピローグで、ゲーム理論を通して、相手の立場に立って考えることができるようになることを目指して欲しいとまとめます。
③どこが役立つか
サブタイトルが「こどもためのゲーム理論」とあるように、中学生、場合によっては高校生が気楽に読みながらゲーム理論の入り口に立つことができます。その意味では、夏の課題図書に推薦できるでしょう。
先生方にとっては、ここで登場するエピソードを使って、ゲーム理論の授業を作ることができるでしょう。
標準型は教科書に登場していますが、「後ろ向き帰納法」や「展開型」はなかなか実際に使うことは多くは無いと思われるので、この本でマスターするのもよいかもしれません。
④感想
取上げられているエピソードは、前著と重複するところがあります。
前著がネズミ一家を主人公としていて、物語としては「どうかな」と思う内容でしたが、今回の本はストーリーが練られていて無理なく読めました。また、ストーリーと理論的説明がマッチしていて、こちらの方が良い出来だと思います。オススメです。
なおこの本、昨年のサントリー学芸賞を受けています。選評を慶応義塾大学の土居丈朗先生が書いています。検索して読まれると良いかと思います。
(経済教育ネットワーク 新井 明)
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