①どんな本か
 冬の経済教室で講演をお願いしている中島隆信先生の著書です。
 障がいをもったお子さんを持たれている経済学者が経済学の知見を使って障がい者問題、社会福祉の問題をどう見てゆくかを書いた本です。
 経済教室の予習に読んでいただければと思い、紹介します。


②本の内容は
 はしがき、あとがきをはさんで全8章の本です。
 序章では、なぜ「障害者の経済学」なのかのタイトルで、本書全体の基本的な立場、経済学をこの問題で使う立場を表明します。
 第1章は、障害者問題の根底にあるもので、障害には医学モデルと社会モデルがあることが紹介され、障がい者問題に私たちがすくんでしまう原因を分析します。
 第2章は、障害者のいる家族で、障害児を産んだ家族の問題、その理解と支援の必要性が書かれています。
 第3章は、障害児教育を考えるで、特別支援教育についてその意義、インセンティブ、配慮のあり方や課題などが紹介されます。
 第4章は、「障害者差別解消法」で何が変わるかというタイトルで、差別一般の理解を踏まえて障害者差別の解決法、その問題点を具体的事例も含めて紹介があります。
 第5章は、障害者施設のガバナンスで、福祉サービスの特徴、障害者施設での福祉サービスと実際、問題点を指摘します。
 第6章は、障害者就労から学ぶ「働き方改革」で、障害者の働き方を経済学からどうとらえ、その問題点、さらに私たちの働き方にどう影響するかが紹介されます。
 終章では、障害者だからといって特別視するのではなく、一般化した上で深く考えれば問題の本質が見えてくるとまとめます。

③どこが役立つか
 社会科や公民の教科書ではさらっと数行で書かれている障がい者問題の深刻さ、奥深さを知るために役立つでしょう。
 特に、第1章、第4章、第6章は、障がい者問題から逆に私たちの社会のあり方を考えさせる授業作りに役立つ考え方が提示されています。
 この本を素材にして授業提案が冬の教室で行われる予定です。どのような提案が出てくるか、予想して参加してもらえると、先生方の授業作りのヒントが得られるのではと思います。

④感想
 この本、新版です。ということは最初の本(2006年刊)があります。絶版ですが、興味をもった先生は購入して、新版と比較するとよいと思います。
 著者が、新版を出すに至った10年刊の障がい者福祉の前進面と課題が新旧比較をすることで浮かび上がると思います。
 大竹先生の行動経済学と中島先生の障害者の経済学をくみあわせたらどんな障がい者福祉の処方箋がでてくるか、それも考えてみたいと思いました。

(経済教育ネットワーク 新井 明)

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