①どんな本か
・昨年12月に出た、有斐閣のストゥデイア・シリーズの一冊です。
・財政学の初年級のテキストですが、財政を通して社会的なイシューを考えさせる本になっています。

②本の内容は
・全体は二部に分かれていて、第1部が「財政の基本をつかむ」、第2部が「財政の視点から社会問題を解く」となっています。
・第1部では、財政学の入門的な知識が、①予算論、②税、③社会保険、④財政赤字、⑤地方財政と5章にわかれて展開されています。
・第2部では、1部の知識をもとに、⑥経済成長と所得再分配、⑦格差・貧困の拡大、⑧世代間の対立、⑨地域の変容、⑩グローバル化と財政の5つのイシューが取り上げられています。
・最後に社会統合と財政ということで、全体を総括しています。

③どこが役立つか
・中高の教科書ではさらりと書いてある部分を、丁寧に展開しています。授業準備で関連の箇所を通読することで、教科書の背景やでてくる事項のつながりを再確認することができるでしょう。
・第2部のそれぞれのイシューは、生徒に調べさせたり、討論をさせたりする素材となりまます。すべてを扱うわけにはいかないでしょうが、生徒の関心や地域の課題などとあわせて適宜とりあげることができます。
・第1部は、主に中学校の授業で、第2部は高校の授業で取り上げると、中高一貫の授業が展望できるかもしれません。

④感想
・大学のテキストがこんなに変わってきているというのを改めて確認しました。
・内容は、多くのテキストと同様ですが、各所に置かれたアクティビティ、章末の「NEXT STEP(理解を深める)」という課題提示、それもBasicとAdvancedの二つを提示しているなど、中高の授業でも参考にできる工夫された箇所がいくつもあります。
・最後に「ティーチャーズ・ガイド」として、「問いの活用法に関するヒント」という付録がついています。そこでは、「考える」タイプの問いとして、<閉じた問い>、<開いた問い>の区別とその具体的な例、また、「調べる」タイプの問いとして、ただ調べただけに終わらせない工夫も書かれています。
・教育方法に関しては、中高の私たちの方がプロと思っていましたが、うかうかできないぞ、というのが正直な感想です。

(経済教育ネットワーク 新井 明)

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