①どんな本か
・2018年に単行本で出版された『アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金編-』の文庫版です。
・サブタイトルが「お金の行動経済学」となっていて、サブタイトル通りの内容です。

②本の内容は
・全体は三部、What-Why-Howの三つの内容に分かれています。
・第1部は「お金とはなんだろう」ということで、三つのお金に関する失敗のストーリーが紹介されます。Whatに相当する部分です。
・第2部は、「価値とほとんど無関係な方法で価値を評価する」のタイトルで、10章にわたって、冒頭のストーリーを含めた様々なお金にまつわる人間行動の不合理さとその原因が紹介されます。Whyにあたる部分です。
・第3部は、「さてどうする?思考のあやまちを乗り越える」として、5つの章で対策を提示します。Howの部分です。
・ストーリーとその分析、間に行動経済学の紹介がコラムで挟まるという、お金に関する行動経済学の気軽な読本と言うべき本です。

③どこが役立つか
・金融教育はどうあるべきかを考えているなかで手に取った一冊です。
・「お金に関する決定で問題にすべきことは、機会費用と、購入物から得られる真の利益と、他のお金の使い道と比べて得られる真の喜びだ」という、著者の結論は、それ金融教育だ、投資教育だと流されがちな私たちの原点をしめすものとして吟味してみる価値ありと思われます。
・本書で取り上げられている多くの事例(例えば最後通牒ゲームなど)は、行動経済学の世界ではポピュラーなものとなっています。アメリカの事例なので日本の文脈ではすこしちがっているかもしれませんが、授業の中でこのように使えるのだ、このように分析できるのだという、手がかりを与えてくれるでしょう。

④感想
・原文のタイトルは、“Dollars and Sense”なので、訳本のタイトル『無料より安いものもある』は訳者が考えたものでしょうが、なかなかセンスが良いので感心しています。
・それでも、「There is no such thing as a free lunch.」は真理ではないかと思ってしまいました。
・③で引用した著者の結論に納得。

(経済教育ネットワーク  新井 明)

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