■小谷 勇人(青島日本人学校)
1 永井竜之介『リープ・マーケティング-中国ベンチャーの学ぶ新時代の「広め方」』(イースト・プレス)
新型コロナの流行は中国国内のビジネスに大打撃を与えました。しかし、むしろ新たなビジネスを一気に開花させる機会ともなりました。中国のデジタル・イノベーションは今後さらに伸び、世界をリードしていくでしょう。中国企業のマーケティング戦略から学ぶことで、日本の製品・サービスが生まれ変われることを期待させてくれる一冊です。

2 大島隆『芝園団地に住んでいます-住民の半分が外国人になったとき何が起きるか』(明石書店)
2018年12月、「特定技能制度」の新設が決定されました。新型コロナの流行に伴い、一旦は外国人流入については足踏みとなっていますが、落ち着いたら増加の一途を辿るでしょう。外国人が同じ場所で暮らすとき何が起き、住民にはどのような感情が芽生えるのか、芽生える感情に対してどうすればいいのか。未来の日本を考える一冊です。

3 村上春樹『職業としての小説家』(新潮社)
世界的に有名な村上春樹の小説がどのような考えで生まれるか著した一冊。「学校について」という章で、日本の教育システムがそのまま社会システムの矛盾につながっているのではという示唆を与えてくれます。学校は誰もが必ず通る教育機関です。その影響力は計り知れません。学校という存在を再度考える機会となるはずの本です。

■杉田 孝之(千葉県立津田沼高等学校)
1 池上彰・佐藤優『僕らが毎日やっている最強の読み方』(東洋経済新報社)
本書はネットとの距離の取り方に悩む人や若者には特にオススメ!読書ばかりでなく、メディアとのつき合い方も変わります。良書に多く近づくためにも、「時間の無駄だった」と感じる悪書に近寄らないためにも、本書を読む価値あり。私の小論文講座を受ける多くの生徒も読んでいます。自らの知的生活をふりかえるためにもぜひ!

2 飯田健・松林哲也・大村華子 『政治行動論』有権者は政治を変えられるのか(有斐閣ストゥディア)
 この有斐閣ストゥディアシリーズは、主に社会科学を学びたい初学者向けには最適!自らの人生設計のために、高校生が学部選択をする際、読者を平易な言葉で学問の世界に導き、新鮮な知見と問いを形成するヒントを提供してくれます。筆者もシルバー民主主義打倒のための有権者教育の授業設計で本書と出会ってから、有斐閣ストゥディアがもう書棚に10冊以上になりました。

3 渡部竜也・井手口泰典 『社会科授業づくりの理論と方法』 (明治図書)
 ある時以降全く評価しなくなった出版社と、この教育学者の言説って何なの?と感じていた筆者。本書は恥ずかしながら確実に渡部ワールドに筆者を引き込みました。特に本質的な問いのあり方に焦点をあてて、定年まであと数年の高校教諭に授業改善を求めています。本質的な問いのあり方や著者を批判するならば、本書を読んでから。筆者にも批判内容をぜひご教示下さい!

■山﨑 辰也(北海道北見北斗高等学校)
1 小磯修二『地方の論理』(岩波書店)
私は東京から離れた北辺の教師なので、中央の発想の受け売りをせず、相対化するようにしています。この小磯さんの「歴史的にも、創造的で大胆な発想は中央から離れた地方で生まれている。中央から距離のある辺境といわれる地域に身を置くと見えてくるものがある」という言葉に勇気をもらいました。北海道の地域活性化を事例にしており、北海道の比較優位性を考える上でもヒントになる本です。

2 保城広至『歴史から理論を創造する方法』(勁草書房)
歴史学者の歴史を見る方法と、社会科学者の歴史を見る方法の違いを検討している本です。経済学者が歴史を読み解くと、理論から演繹的に考察する方法が用いられます。この系譜にあるのは、篠原先生の歴史を読み解くシリーズや、昨年話題になった梶谷真弘さんの『経済視点で学ぶ歴史の授業』の本の内容です。経済の視点で歴史を捉えることの是非を考えるのにお勧めの1冊です。

3 H・リン・エリクソンほか『思考する教室をつくる概念型カリキュラムの理論と実践』(北大路書房)
国際バカロレア(IB)プログラムにおける概念型カリキュラムや単元設計の方法を紹介している本です。経済教育の概念型カリキュラムというと、アメリカの方法論を用いた新井先生、猪瀬先生、栗原先生の若きころの実践を連想してしまいます。これからの概念思考(=「見方・考え方」)を働かせる授業づくりをする上で、示唆の得られる1冊だと思います。

■塙 枝里子(東京都立農業高等学校)
1 出口治明『自分の頭で考える日本の論点』(幻冬舎新書)
 ライフネット生命創業者、A P U学長の出口氏の著書の中でも特に敷居が低く、高校生でも手に取ることが出来る一冊。本書は日本の抱える22の論点について、基礎知識を整理した上で、著者の思考プロセスを紹介する構成になっています。私は高3生の日本史の授業で「憲法9条は改正すべきか」を扱い、大いに盛り上がりました。「主体的・対話的で深い学び」の幅を広げるのに役に立つのではないでしょうか。

2 山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学』(光文社新書)
 経済教育ネットワークでもお世話になっている大竹文雄先生ご推薦の一冊。労働経済学が専門の山口氏が、結婚、出産、子育てについて、エビデンスベースで分かりやすく解説しています。「キャリア女性ほど結婚のメリットは減る?!」、「マッチングサイトのリアル」、「離婚が子供にもたらす影響」など○○神話やタブーがある世界を理路整然と分析していく文体は心地良く、思わず「ほらね!」と誰かに話してみたくなるはずです。

3 藤野英人『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)
 Covid-19によるパンデミックは歴史に残る大きな転換期となりそうです。不確実性の高い時代に、私たちはどのような信念を持って、何を大切にして生きていくことが必要でしょうか。投資信託運用会社の代表でもあり、投資教育にも熱心な藤野氏は、自身が「投資家」みたいに生きることを推奨しています。投資は何もお金の使い方だけでなく、時間の使い方にも言えることです。今、私は限りある資源を生徒や自分のために投資できているのだろうか。問いかけ、歩みを進めたいと思います。

■金子 幹夫(神奈川県立三浦初声高等学校)
1 渡辺秀樹『芦部信喜 平和への憲法学』(岩波書店)
 これまで『憲法』の芦部先生についての評伝は書かれていなかったそうです。著者は信濃毎日新聞の記者。新聞記者の文章は五感にまでとどく躍動感があります。恵庭事件、長沼事件、猿払事件と教科書や資料集に登場する出来事が次々に登場します。どうして憲法を学ぶことが必要なのかを感じさせてくれる,教師を元気にする一冊だと思います。

2 森 絵都『みかづき』(集英社)
 空欄に用語を書き込むワークシートをつくろうとすると手が止まることがあります。生徒は用語(記号)からどのようなイメージを描くのかがわからないからです。この作品は、昭和30年代の千葉県を舞台に学習塾と公教育をテーマに設定した小説です。勉強がわかる楽しさを知る補習塾、そして進学塾への転換・・・。何がわかると子どもは幸せになるのかを考えさせられる一冊です。

3 橋本健二『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)
 本書は「現代日本では格差は容認できないほど大きくなっており,格差を縮小させ、より平等な社会を実現することが必要だ」という立ち位置から「現代日本に存在する4+1=5つの階級がどのように生活しているのかを」アンダークラスという概念を用いて明らかにしていきます。生徒に読み取らせたいデータがたくさん掲載されている本です。

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