①どんな本か
・『多数決を疑う』『ミクロ経済学の入門の入門』ともに岩波新書を書いた著者が、友人と共に運営している「オークションラボ」でのワークショップを本にしたものです。
・オークション理論やマッチング理論を実際にどう使うことができるのかを示している本で、サブタイトルが「ミクロ経済学のビジネス活用」となっています。
・全体は、8章で、それは以下の通りです。
第1章 オークション理論をビジネスへ
第2章 発行コインのオークション
第3章 コインを売るならば
第4章 組み合わせて売る
第5章 マッチング
第6章 多数決を脱して、まともな投票を
第7章 投票結果の分析
第8章 コロナショックの後始末
・ワークショップでのレクチャー、質疑、対話からなるので読みやすい本になっています。ワークショップの雰囲気がそのまま本なっていると言っても良いでしょう。
・内容はビジネスですが、第6章の多数決などは社会的意思決定とつながる大きなテーマです。
②授業で使えるところ
・市場にはプライマリーとセカンダリーがあるという指摘をしている第2章、オークションには様々な方式があって、それぞれの商品の特質によりそれを分けているという第3章などが市場の学習の箇所で参考になる場所と思われます。
・第4章では、研修医のマッチング、第5章では部屋と臓器の取り替えがあつかわれています。特に臓器に関しては、大学入試の小論文でも登場しているテーマなので、受検生を抱えている先生には良いかも知れません。
・一番使えるのは、第6章でしょう。ここでは『多数決を疑う』に出てきた、多数決以外の決定方法が扱われています。選挙制度を変えることは至難の業ですが、多数決を超える理論によって、様々な事例を積み重ねることで、社会にインパクトを与えることができるかもしれないという前向きの考えを持つことが出来そうです。
③感想
・ビジネス活用というサブタイトルで、これもちょっと引いた本ですが、読んでみて、実に面白い内容じゃないかと感心してしまいました。
・特に、多数決を扱った箇所は、経済を政治に接続するという意味で、公民科の教員にとって今の制度を教えるだけの授業から飛び出す可能性を提示しているのではと思いました。
(経済教育ネットワーク 新井 明)
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