執筆者 新井明

 東京での冬の教室のテーマが「地理教育と経済」であったので、関連して地図の効用を紹介してみようと思います。  地図は地理の学習の必須アイテムですが、経済の学習でも利用価値は大きい ことは言うまでもありません。産業学習などでは、どの国に、またどの地域に どんな産業があるのかをビジュアルで理解するには地図で確認することが有効 です。もちろん統計データを読み取ることも必要ですが、やはりイメージを通 して理解したものの方が強いことも事実でしょう。 

 経済の学習だけでなく、歴史でも地図は必須です。教科書で地名が出てきてもそれがどこであるかがわからないと、歴史事項はたんなる記号の集積にしか なりません。地歴並行学習が理想的にゆけば、空間の認識と時間の認識が同時 に深まり立体的になるはずですが、そう簡単に問屋はおろしてはくれません。 

 でも、身近に地図を置いて、暇に任せてみているというのも勉強へのモチベーションを上げてくれるもの。公民の授業の内職で地図を見ている生徒がいた ら、注意をするのにちょっと躊躇しますね。 

 さて、地図は紙ベースの地図帳とウエッブ上で展開されるものがあります。  前者で使えるものは、小学校の地図帳です。これはいろいろな特産物や産業、 名物などが地形図上に絵で描かれているので面白く使えます。 

 もう一つおすすめは、地歴地図です。歴史的事件が現在の地図上に書かれています。これをみると、政治だけでなく経済でもいかに歴史的な背景をもって 現在に存在しているのか、歴史としての現代社会を認識することができます。 

 ウェブ上の地図では、グーグルアースの利用価値があるでしょう。冬の教室で河原典史先生が指摘されていましたが、拡大して屋根の瓦の色を見ることで その地域の開発の経過までわかるくらいの優れものといえるでしょう。ヤフー にも似たようなものがありますが、ストリートビューがついている分、グーグ ルが一枚上かもしれません。 

 いずれにしても、経済の勉強に直接使わなくとも、地図を活用することで学習のインセンティブや厚みが違ってくることは確かでしょう。 

 ちなみに、私は、小説、特に海外小説を読むときには、まず地図で舞台となる場所を確認します。さらにグーグルアースやストリートビューで現在の状況 のイメージをつかんだうえで楽しむようにしています。これも活用法の一つかもしれません。

(メルマガ 96号から転載)

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