ワークショップ「熊本」

■日時 2008年2月15日 13:25-16:30
■場所 熊本学園大学付属高等学校および熊本学園大学

熊本学園大学および同大学付属高校において、経済教育ワークショップ(熊本)が開催された。当日は県下22の学校から40名が参加し活発な議論がなされた。

【プログラム】

13:00~  受付: 熊本学園大学付属高等学校玄関

Ⅰ.モデル授業: シミュレーション教材公開授業 (1年8組現代社会)
13:25~14:15   会場: 熊本学園大学付属高等学校 3F視聴覚室
           (司会:熊本学園大学付属高等学校 浦崎勇一)

13:25~14:15   なぜ政府が必要か-公共財ゲームで考える
           (みんなが共通の利益を受けられるために)
           (弘前大学教育学部 猪瀬武則)

Ⅱ.経済教育の進め方  
14:30~16:30   会場: 熊本学園大学12号館3階(付属高等学校から移動します)
           (司会: 熊本県立熊本高等学校 田中 篤)

14:30~14:35   挨拶: 熊本学園大学経済学部長 笹山 茂
           熊本県高等学校教育研究会地歴・公民部会会長 大畑誠也

(1)授業検討会
14:35~14:50   教材・授業の説明 (弘前大学教育学部 猪瀬武則)
14:50~15:10   質疑

(2)経済教育を構成するポイント
15:10~15:45   講演:先生方に知っておいていただきたい経済学の考え方
           (同志社大学経済学部 篠原総一)
15:45~15:50   休憩(及び質問用紙の回収・整理)
15:50~16:25   意見交換「公民教育・授業の課題」

16:25~16:30   閉会挨拶    経済教育ネットワーク代表 篠原総一

【ワークショップの要約】

Ⅰ.モデル授業:シミュレーション教材公開授業:「なぜ政府が必要か-公共財ゲームで考える」

最初のセッションは、「みんなが共通の利益を受けられるために-マンションの耐震改修を 通して政府の経済活動を考える」というシミュレーション教材を用いた授業が行われた。 教材は前回の大阪大会と同じものであるが、今回は現役高校生 (熊本学園大学付属高校1年8組のみなさん)を相手に、猪瀬武則先生(弘前大学)が挑んだ。

簡単な自己紹介のあと、授業の導入として生徒たちに消費税率引き上げや年金に関する質問を投げかけた。各人の立場を明確にするために、教室の四隅に「賛成」「反対」 「条件付賛成」「条件付反対」という紙を貼り、その場所に移動させるという形式を取った。

続いて、「政府(財政)の三機能」すなわち「所得の再分配」「景気の調整」「公共財の提供」について簡単に触れたあと、3つめの「公共財の提供」に関するゲームを 行うことを告げた。

ゲームでは、10家族(10戸)に分かれて、自分たちが住んでいるマンションの耐震改修工事の費用(一律200万円)を負担するかどうかの意思決定を行った。その結果、 1回目は「払う」が7班、「払わない」が3班、2回目は1回目と同じ(7班と3班)、そして3回目は6班と4班となった。時間の関係で生徒の考えを聞くことは できなかったが、道徳的に判断した班が多かったのではないだろうか。

ゲーム後の振り返りでは、他の家族が払うか払わないかに関係なく、改修費を払わないことが自分の利益を最大化する合理的な選択ということになるが、その結果誰も 払わなければマンションの価値は失われてしまうこと、一方、すべての家族が負担すれば資産価値は最大になり、みんなが利益を享受できることなどが示された。 このような体験活動を通して、政府の役割について考えさせようというのがゲームの意図である。

Ⅱ.経済教育の進め方

会場を隣接する熊本学園大学に移し、田中篤先生(県立熊本高校)の司会で第2セッションが始まった。

熊本県高等学校教育研究会地歴・公民部会会長の大畑誠也先生、熊本学園大学経済学部長の笹山茂先生のご挨拶に続き、公開授業に関する検討会を行った。 最初に授業者の猪瀬先生から「公共財ゲームの意味」というテーマで、教材や授業の説明とともに、経済教育の在り方等に関する考えが示された。質疑応答では、 「消費税率引き上げ云々という導入時の質問では、『条件付き・・』という中間項を設定していたのに、ゲームでは『半額払う』などの中間項を設けなかったのはなぜか」、 「ゲームの中で答えの階層があれば生徒にサゼスチョンできる」、「今後の展開はどうなっていくのか」等々、活発な議論がなされた。

続いて、篠原総一先生(同志社大学)が、「先生方に知っておいていただきたい経済学の考え方」というテーマで講演された。まず、経済教育というと投資や金融の方に 目が向きがちであるが、「善く生きる」には社会の仕組みを知って考えることが重要であるということ、そのために社会を見る眼を養うことと、社会のあり方を考える際に 正解は一つではないということに気付かせることが大切であり、そこに経済教育を普及させる意味があると話された。続いて、中高で使用している教科書の問題に触れたあと、 「市場メカニズムの意義」や「政府経済活動の意義」、「効率と公平」などを取り上げ、 思い込みや思い付きを廃して社会の動きや全体像を捉えることの重要性について説かれた。すべて具体例をあげながら、経済学の基本的な考え方を少し知っていれば、 世の中はこう見えるというスタンスで話を進められたため大変わかりやすく、参加された先生方は身を乗り出して聞き入っていた。質疑応答の時間に入っても、 もっと聞きたいという要望が強く、さらに金融の考え方や株式市場についても話された。

なお、講演のなかで、高校の先生方を対象として、教科書に掲載されている経済の概念をやさしく解説するセミナーを、夏休み中に実施する予定であることが紹介された。

休憩の後、熊本の先生方が持ち寄った教材について意見交換がなされた。そのうちの1つが貿易ゲームを扱ったものだったため、猪瀬・篠原両先生からさらに詳しい解説が なされた。

最後に、篠原先生が閉会の挨拶をされ、熊本でのワークショップを終えた。

(文責:藤井宏樹)

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