ワークショップ「大分」

■日時 2010年3月19日(金) 14時00分~17時05分
■場所 大分大学教育福祉科学部 大会議室

経済教育ワークショップ(大分)を開催した。大分大学教育福祉科学部社会認識教育講座の平田利文教授と永田忠道准教授の支援により、 県下の小学校・中学校・高等学校教員、教員志望学生など23名が参加し、模擬授業と新学習指導要領における「経済学習」の見方考え方の提案を行った。

【プログラム】

13:30~  受付

14:00~14:05 主催者挨拶、講師紹介

14:05~15:20 「経済の教え方は、新学習指導要領でどう変わるか ―中学校教科書を素材に読み解く」
同志社大学経済学部 教授 篠原 総一

15:40~17:00 模擬授業「シミュレーションを使った中学経済の授業例 —マンションの耐震建築を通してみんなの共通の利益を考える(公共財ゲーム)」
弘前大学教育学部 教授   猪瀬 武則

17:00~17:05 閉会挨拶   主催者挨拶

【ワークショップの要約】

永田忠道准教授により、経済教育ネットワークと講演者二人の紹介をいただき、猪瀬の挨拶に続いて、篠原代表の講演が展開された。今回は、日程上の都合で、 順番が逆になった。

篠原代表が、「教科書で教える『公民:経済』」と題して講演。「なぜ、中学校社会科の公民的分野では、経済を教えるのか」、その目標と内容を押さえる上での「経済的見方考え方」を、新学習指導要領をふまえて解説した。目標を、「しくみ理解」と「機能しない理由とその対処」を学ぶこととし、 その基準に次期学習指導要領の主要概念「効率と公正」があるとした。パレート最適の含意を説明されたが、これを中学校の説明に持ってくるのではなく、 その理論的背景を知ることの意義を説明された。また、学習内容として、経済概念では、「分業と交換」の重要性を説かれた。前者が企業、交換を市場とし、 これによって、教科書のあらゆる部分に配置される経済単元は、驚くほど容易にしくみ理解が促進されるとした。時間が迫っていたので十分には展開が 果たせなかったものの、金融について、交換比率としての利子率、取引標準化のための銀行、信用の高い企業の資金調達としての直接金融などの説明が なされた。

直接金融の典型例として説明される株式に関しては、通俗的な説明を排し、キャピタルゲインに関するゼロサムゲームの側面や、流通する株式自体は、 会社設立での「直接の資金」ではないことなどの言及がなされた。具体的事例や脱線事例は、紙幅の許す範囲でないので、是非、以降のワークショップ などでの講演を参照されたい。

次に、猪瀬が模擬授業を行った。内容としての「政府の必要性と税や公共性の意義」、方法としての「ゲーミングシュミレーション」、目標としての 「合理的価値判断ができる能力」の説明の後、アクティビティとシミュレーションを行った。アクティビティは、「現状の年金制度の是非」についての選択を、「4つのコーナー」を通して考えさせた。次に、中川雅之教授(日本大学)開発「シミュレーション」の体験である。マンション補修に関して、 個人とグループによる意思決定を経て、最終的には、個人の財産価値を最大にする選択行動がマンション住民(公共)全員の財産価値の最大にはならず 、むしろ全員の協調行動が必要であることが理解できるようになっている。最後に、ジョン・ロックの社会契約の意義と共にゲームの目的を総括した。

年度末、そして、短期間でこのワークショップの開催・調整を下さった平田教授と永田准教授に改めて感謝申し上げる次第である。

(文責:猪瀬武則)

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