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実践事例 「公共財ゲーム:マンションの耐震改修」

実践事例1:修正モデル提案 (2010/4/13)



「経済教育ネットワーク」は、学校現場の模擬授業で利用できる教材開発を進めている。その中の一つに、公共財モデル」がある。元来、このモデルは 中川雅之氏(日本大学経済学部 教授)が大学の講義で使われていた教材である。この教材は、公共財の最適な規模が民間の市場取引を通じて実現されないので、 政府が代わって着手する必要性について理解させることを目的としていた。すなわち、民間の市場取引に委ねると「囚人のジレンマ」に陥ることを、 ゲームを通じて理解させることであった。

「公共財モデル」の面白さから、中学校や高等学校の模擬授業で使う試みが進められてきた。その過程の中で、いくつかの問題点が浮かび上がってきたが、 主要な問題点は以下の通りである。
 ①ゲームの狙いがはっきりしないので、明確にする必要性。
 ②ゲームが複雑なので、簡素化する必要性。
 ③担当の先生に振り返りや評価について分かりやすくする必要性。

これらの問題点の中で、①については「市場の失敗」を解き明かすことを目的としている。教科書で頻繁に引用されるアダム・スミスの“見えざる手”の 意味は、「競争市場で個々人が自己の利益だけを追い求めたとしても、結果的にも社会全体からみてベストの状態に誘導されている(この正確な証明は 難しい!!)。」ところが、競争市場での利己的な取引が個々人にとっても不利益をもたらす場合がある。それを「市場の失敗」が発生しているという。 公共財がその典型的な例である。

この「市場の失敗」を具体的な例で生徒たちに容易に理解してもらえるように、②と③の問題点を考慮しながら修正や改正が加えられてきた。そこで、 二つの修正されたモデルについて、経済教育ネットワークのHPに掲載することになった。

第1のモデルは奥田修一郎氏(大阪狭山市立南中学校)による「マンションの耐震化工事」で、第2のモデルは高橋勝也氏(東京都立桜修館中等教育学校)に よる「村の灌漑工事」である。奥田モデルの特徴は、生徒個々で自らの資産価値を最大にするように考えていくことにある。 そして、振り返りで公共性や政府の必要性を強調することになる。一方、高橋モデルの特徴は、グループで議論させながら、フリーライドすることなく 協調することの大切さを理解させることにある。

中川モデル(2009/12)

奥田モデル(2010/4)

高橋モデル(2010/4)


(文責:西村理)

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