ワークショップ「福井」
■日時:2010年11月13日(土) 13時00分~17時00分
■場所:福井大学文京キャンパス(総合研究棟1 小2講)
【プログラム】
13:00〜13:05 開会挨拶
13:05〜14:30 講演:中学校公民「教科書」を読み解く(同志社大学経済学部 篠原総一)
14:30~16:00 教材提案:
「住宅メーカー 職場シミュレーション」(東京都目黒区立目黒中央中学校 三枝利多)
16:10~16:55 討論:ゲーム教材の使い方(大阪府狭山市立南中学校 奥田修一郎)
16:55~17:00閉会挨拶
【ワークショップの要約】
講演 篠原代表 中学校公民「教科書」を読み解く
公民「経済」で目指されることは、社会の仕組み(成り立ち)学習である。
その仕組みがうまく機能していないなら、なぜ、うまく機能していないのか、
その理由を理解すること。次に、それがうまく機能するためには、どうすれば
よいのかを考える学習である。
その際、「効率と公正」という基準で見ていくことが、新学習指導要領のねらい
である。効率は無駄を省くこと。公正は3つの視点から考えるとよい。
一つは、みんなが参加できているか、二つ目は決め方がそもそも公正か、
三つ目は、決めたことが一部の人のもの(利益)になっていないかである。
また、私たちの生活は「分業と交換」で成り立っていることを理解させることが
大切である。歴史的に「分業と交換」の歩みを見てみるとわかりやすくなる。
現代では企業が「分業」の仕組みの核であり、市場が「交換」の仕組みの中心だ。
政府は、民間の「分業と交換」の仕組みを支えるルールをつくり、それを監視・監督
する役割を持っている。それを、図にしたものを教える側が意識すると、子どもにも
わかりやすいものになる。
さらに、ポイントとして、「企業」「家計」「政府」「銀行」の経済主体がそれぞれ別個に
活動しているわけでなく、それらが密接に関係していることをつかませることである。
例えば、家計の所得は、企業で働いた給料を使って、いろいろなモノを消費する。
住宅を購入する際には、ローンを組むが、そこで金融の仕組みと関連してくるなど。
教材提案 三枝先生(東京 目黒中央中学校)「住宅メーカー 職場シミュレーショ
ン」
まず、経済の授業が敬遠されがちな理由で大きいのが、教える側・教わる側も
難しいという意識である。その意識を取り除くためには、教師の立場としては、
教えるに当たっての中心概念(基本的な見方・考え方)をつかむことがまず大切だ。
次に中学生に概念をつかませるためには、活動(体験)型授業が有効であ
る。ただ、留意したいのは、その授業で何を学ばせるのかの見通しを持つことである。
そうしないと活動主義になる。 また、「最初から教え込まない我慢と工夫」
「生徒の見方・考え方などを分析して生徒の変容に気づくこと」「ふり返りの授業を
大切にする」「外部講師を授業に取り入れる」といったことも考慮に入れたい。
その後、三枝先生が開発され、授業実践をされてきたいくつかの活動型授業を
紹介され、後半は、「住宅メーカー、職場シミュレーション」の中の「無人島漂着シ
ミュレーション」を実際、参加者と模擬授業をされた。「職場シミュレーション」の方では、
ねらいと授業をする際の工夫を述べられた。
討論 奥田 ゲーム教材の使い方
まず、会場から、三枝先生提案の教材に関した感想・質問・意見を聞いた。奥田の方
から、ワークショップ教材の類型化とその整理をした。次に、現場でより提案教材が
活かせる手だてとして、「そのストーリーに子ども達が入り込める工夫」のいくつか
を提案した。今後の課題として、①経済学習25時間の中で、この教材を使う際に、
どんなカリキュラムを考えるか、②何かに重点をおけば、何かを薄くしないといけな
いという教材選択上でのトレードオフがあり、教科書の視野に入れての学習構成をど
う考えていくか、③新教材を使う場合、評価の問題をどうするのか などを提起した。
このワークショップを通じて感じたことだが、三枝先生提案の教材は、これまで
の活動型教材に比べると、家計や企業、政府、金融の相互の関係性を見通すもの
なので、教える側のより深い教材研究が必要であるが、「社会の仕組み」と「分業と交
換」をつかませる上では、大変有効な教材である。今回のようなワークショップや実
際の授業を通じて、この教材をどう使っていくかの感想・意見をもらうことで、より
現場で使われていくものになると思われた。
(文責 奥田修一郎)